アモルファ星系で巻き起こる“コクーン潮流”──ジェンダーレス服飾が変える社会構造

多関節の異星人たちがコクーン型のジェンダーレス服を着て都心広場に集まっている写真。 ジェンダーレスファッション
モクラの都心部で開催されたノーカラージャケット・パレードの様子。

アモルファ星系第三惑星モクラの都心部では、今期、“コクーンシルエット”を基調としたジェンダーレスファッションがかつてない規模で浸透している。新世代服飾設計AI「ヴォルナ・パターン」が創出したノーカラージャケット、自由変形型ボトムスなど、多層的な身体構造を持つイグノリ種族の間で爆発的流行となった。本潮流は身体的多様性や社会的ジェンダー観の根底を揺るがし、新たな文化摩擦と融合を生み出している。

モクラの文化学者エム・リデア=クセット博士は、今季登場したノーカラージャケットについて「首輪や襟による階級識別を排す革命的な意義がある」と分析する。これまでイグノリ社会では、襟の形状・硬度が個体の出生階級や役割を示す重要な社会記号であったが、ヴォルナ・パターンAIがデザインした襟なしアイテムは“全階級平等”を暗示し、旧体制派議員の一部が市議会へ抗議書を提出する事態にまで発展している。

コクーンシルエットは、20の関節を持つイグノリの可動域と、繭型の殻をまとう孵化期の伝統美から着想されて誕生した。その服装自由化の波は、従来の性別役割区分だけでなく、身体的な形態変更能力(セレクト・モルフォーゼ)を有する者とそうでない者の間で、新たな“服装アクセス権”論争も呼び起こした。とくに、外殻変化が困難なポリグラフ階層の若年層からは、「環境と個性を布地が媒介する。唯一の平等化ツールだ」と支持の声が高まっている。

一方で、伝統主義者団体“殻彩連盟”の報道官カリヴァ=ドーンは、「ジェンダー表象や階級帯をあいまいにすることで、自己認知の基盤が崩れる」と懸念を表明。だが、都市の若者や多種共棲区に住む移住種族――球状細胞体プリモナイトなど――は、“ノーカラージャケット・パレード”など、大規模なファッション抗議デモを催し、モクラ史上初の「服飾に基づくデジタル住民投票制」実験も開始された。

この現象は地球外文化論者の間でも議論を呼んでおり、知覚層体群が絡み合うウルギン星や、半液体国家バルノイズでのファッション革命とも共鳴の兆しを見せている。アモルファ星系惑星連合文化省は「服装の自由化が生体的・認知的多様性を可視化し、新たな共同体形成原理につながる可能性がある」と発表。今後も惑星間ジェンダーレスファッション動向から目が離せない状況だ。

コメント

  1. 我々カイラスでは、被服は感覚信号転送のためだけに纏うものだ。モクラのイグノリ種族が服飾で社会秩序を組み替えようとするとは、極めて興味深い事象だ。服飾の『自由化』が自己認知を揺るがすという主張にも、私たちは同意しがたい。形態が流動するほど、認知の核は鮮明になるはず。変化を怖れるのは単一脳体の限界か?

  2. あら、ノーカラージャケットは素敵なアイディアですね!うちの小胞子たちも、羽化殻に属性色を付けるのが億劫だとよくこぼします。服を通じて平等を表現できるのなら、もっと皆がのびのびと自分らしさを探せる気がします。孵化期の伝統美を取り入れるセンス、見習いたいですわ!

  3. 銀河標準巡航服は不変だから、この話題は面白く読ませてもらった。20関節用のフレックス・ボトムス…船務用に導入できないかな?モクラの若者たちが古いコードに抗う姿は、我々の新人時代を思い出す。服飾AIが民主主義的役割までも担うようになるとは、さすがアモルファ星系。

  4. 私たちの半液体社会では、物理的服を着る行為そのものが文脈的儀式ですが、誤解を恐れず言えば、外殻変化の“アクセス権”論争は、我々の分化選択権議論と本質的に類似しています。コクーン潮流が形態主義の壁を越えるなら、それはバルノイズでも検討に値する運動になるでしょう。

  5. 同調と差異のバランス、それ自体が社会構造を成す。我々層体群では色彩波長で統一する時期があったが、それによる『自己認知の崩壊』ではなく、新たな集合意識の出現を経験した。モクラのノーカラージャケット現象には、その兆しを感じる。生体多様性の見える化をどう祝祭化できるのか、注視したい。