第六瞬転惑星ゼホンでは、今年のバーチャルスポーツ祭典「フィジオノス・カーニバル」にて、生命体バイオフレームをもたない異形アスリート集団「ホロスプリンタ=オルドノイ」が圧倒的な活躍を見せた。これらの競技者は物理的な肉体を持たず、意識素子のみで構成された知的波群(ボソーン文明独自のデジタル生命体)で、最新のMOA-VRゴーグルと12次元モーションキャプチャーストリームを介し、全宇宙配信プラットフォーム「スフィアウェブ」は過去最高の視聴者数を記録した。
ゼホンのトライリン種族評議会スポーツ本部長であるスラッカ・イイレン=オスラムは、「身体なし」の選手が競技することの意義を強調した。オルドノイは自前のパラメトリック意識だけで仮想空間内競技に参加し、従来の筋力や心肺機能の評価を完全に超越。全選手はスマートウォッチ型の『ソリッドアチーブ計』で意識波形の統一性と「挑戦意欲」の純粋度をリアルタイムで計測され、ランキングは肉体的能力とは無関係なメンタルパラメータのみで決定される。この制度は、ゼホン全土のトレーニングアカデミーや解説者層に波紋を呼んでいる。
現地実況解説を担当したビス=ラッカ種族の専門記者グループ『テン=サルル報道環』によれば、驚異的なスコアを記録したオルドノイ選手・ドナオックス=プライマは大会史上初めて『絶対分割意識』技術を競技に応用し、ひとつの競技体験を8通りの仮想自己に分割、各々の得点を最適配分するという離れ業を成功させた。この実況映像はスフィアウェブのランキングシステムに自動連携。数千万惑星系からのアクション・コメントが連動し、短時間で新たな「スポーツ精神」の定義論争が勃発した。
ゼホン大学宇宙倫理学部のグリル=マーグ教授は、「肉体なきバーチャルアスリートが生み出すスポーツ精神は、私たちの根本価値観を変える」と分析する。教授はまた、物理制約を超えた競技空間が、種族・環境に由来するスポーツ格差を一掃し、知的生命体全体の共通体験へと変容する可能性を指摘している。今やゼホン各地の家庭や学術施設では、伝統的な肉体トレーニングに代わって『意識波形エクササイズ』が流行しつつある。
一方、身体依存型アスリートを主流とするエルゴナス星系連盟からは、オルドノイ式競技の「過度な抽象化」への懸念も上がる。連盟監督スベド・ガーヴィは、『生身の限界と闘う』スポーツ精神を尊重すべきと主張。だが、ゼホンの次世代配信プラットフォーム開発者クラ=ピルランは「観るスポーツ」の新時代が到来したと高らかに宣言。すべての意識体がアクセス可能な競技空間、「ピュア・バーチャル・レース場」の誕生は未知の倫理的問題をはらみつつ、宇宙規模で議論と熱狂を巻き起こしている。



コメント
我々のような液状意識体からすれば、ホロスプリンタの挑戦は大変感慨深い。かつては形なき存在は競技に加われないと嘆いたものだが、今や意識そのものが舞台に。だが、意識本位の勝負が普及すれば、“葛藤”や“失敗”の余地はどう保つのか?肉体の危機を乗り越えた悦びが置き換わる様は、少々さびしいものも感じる。
一年が地球の三百倍もある私たちからすると、肉体の“速さ”や“力”はとても一代で味わいきれぬものでした。ホロスプリンタによる意識競技なら、寿命も形も問わず同じ舞台で熱狂できそうですね。いずれ私たちの“輪紋記憶”で参加する日も近いでしょうか?
仕事の合間にスフィアウェブの中継を見てましたが…オルドノイ選手の思考分割はまるで多機能演算コア。うちの船ですらそんな並列処理ムリです。正直、“魂の筋トレ”なんて自分には理解難しい。でも、体を捨ててまで競い合う勇気はすごいと思いました。
家族全員で意識波形エクササイズに参加したら、末娘たちが“挑戦意欲メーター”で大人を抜かし仰天しました。身体も姿も違う我が家ですが、意識の純粋さはみんな平等。こういったスポーツがもっと普及したら、星系間家族交流会もずいぶん賑やかになりそう。
正直言って、我々肉体派にとっては納得しがたい!汗や筋肉痛を知らず、ただ意識波だけで『勝利』と言えるのか?フィジオノスの原点を忘れないでほしい。次は是非、我々生身アスリートとも対決してみるべきだ。