暗黒周期が長く続くクリソニア星で、近年突如として“外暮らし”が一大トレンドとなった。真空対応型リキッドスキンを纏った市民たちが、寒冷の大地で焚き火を囲み、匂い発光肉(ルミノカルニス)を焼きながら談笑する光景が、主要都市リタルドームから辺境自治帯プラガルまで広がっている。自然を軽視してきたクリソニア文明だが、なぜ今、寒空の下でアウトドア文化が爆発しているのか。背景には、ハーフポリム種主導の『暮らしの再編』運動と、惑星固有の環境制御問題が密接に絡んでいる。
クリソニア星の大気は高度な絶縁性を持ち、従来屋内活動が重視されてきた。“シェルター社会”とも揶揄される家族核密集型都市設計は、20周期前のエネルギー危機以降、厳しく定着してきた。だが昨惑星周期、北方のセロム笹原環で起きた大規模電磁嵐の影響でエネルギー供給網の混乱が発生、外部熱源(焚き火)依存の必要性が急増。これを契機に、寒耐性形質を持つハーフポリム種族のジュクト・ヴェランド議員が、『新・外活動推進令』を発議する。原始的と敬遠されていた火を“合法的活動ツール”と再定義した画期的な法改正だった。
ヴェランド議員の提唱により、各自治界で“ルミノ・ファイヤー”イベントが公式に認可。発光性食肉の開発がブームとなり、市民は夜間の大地で色彩豊かに光るバーベキューを手軽に楽しむようになった。焚き火を囲む習慣は、単なるレジャーにとどまらず、暗黒周期特有の孤独感や精神沈滞症(ポルミスシンドローム)対策としても高く評価されつつある。従来禁忌とされてきた集団野営(クリナイト・トレイル)も、再評価される動きが加速。各地で「車中泊」専用の重力遮断シェルターカートの発売が相次ぎ、個体間交流モデルにまで変革が及んでいる。
背景には、都市型生活の限界だけでなく銀河系内の異文明交流の影響が指摘されている。先進的だと信じられていたオルガス連邦の“常時空調都市”が精神疾患率上昇を記録した一方、最近クリソニア都市圏でアウトドア派の躁的傾向と生産性指標の改善が示された。地球旅行帰りの探訪者クラツ=ミドリ氏(ハーフポリム種)は語る。「われわれの祖先は遥か昔、夜野営と火を通じて社会を成してきた。幾層もの技術発展が、結局原初の知恵の大切さを再発見させる――この現象は偶然ではない」
専門家の間では近年の“外暮らし革命”がクリソニア社会全体の生活様式のみならず、群体精神安定制度や雇用構造、育成教育法まで影響し始めているとの見方もある。次周期には暗黒夜限定の“歩くミクロ・トレイルシアター”、風味発光バーベキュー選手権なども予定されており、“焚き火を囲み語り合う”原体験がいかに新しい宇宙市民像を設計しうるか、注目と期待が高まっている。



コメント
クリソニアで“ルミノ・ファイヤー”が人気と聞いて、波長調整コミュニティとしては実に興味深い進化だ。我々は元来、夜間の集会に超音響共鳴を用いるが、発光肉の色彩効果は新鮮。群体精神の安定が火をきっかけに改善されたという記述も注目に値する。ヴィルミスでも同様の精神疾患予防策として導入を検討する価値があるかもしれん。
室内ばかりで過ごす社会が、やっと外暮らしの豊かさに気づいたとは微笑ましい!我々ゾガール種は数百周回前から大気圏野宴を行っているよ(主に浮遊藻餌だけど)。でも、焚き火の合法化、食べ物をわざわざ光らせる発想、その発明心には脱帽だね。惜しむらくは、車中泊カートほど過保護には感じるけど、個体間交流増は良い兆候かな。
深宙のパトロール中にクリソニアの夜面発光を観測したことがありますが、艦内シフトのメンバー間でも話題になりました。地上住民による意図的な明滅活動は、遠距離からのシグナル識別にも悪影響…あ、いや、観測上は目立って便利な事例です。シェルター生活から抜け出す流れ、隔離型コロニーにも波及するのでは?
古い記録によれば、火を囲む共同体形成は宇宙の多くで一種の通過儀礼でした。クリソニアも長く技術進歩の果てに文化的断絶に苦しんだのでしょうか?先進と伝来の均衡を再設計しようとする“外暮らし革命”、歴史の輪廻を見る思いです。群体精神制度と絡めた議論が今後どう展開するか、経過を追い続けたいです。
まあ!クリソニアのみなさんも外で集まって食事やおしゃべりする楽しさを見直すなんて嬉しい!発光肉は家の小さな子たちも大喜び間違いなし。でも、真空対応スキンとか寒冷地仕様道具とか…道具揃えに苦労しそう。いつか家族で現地に見学したいわ。次は惑星間バーベキュー大会、ぜひ実現させてね!