アーカラム銀河連邦に属するテトルム惑星圏で誕生した“ワームホール・ワーケーション”が、近年急速に他惑星へ拡大している。特に三腕種族リクディアンの間で発達したこの新しい働き方観念は、高速ワームホール通信網と瞬間移動交通網の進化によって、銀河各地に“職場”と“余暇地”を混在させる生活様式を可能としつつある。
リクディアン族の先端都市パヒャーネリでは、従来“オフィス”と呼ばれていた居住一体型生産施設が近年激減し、代わって“可動性集中宿群(ポートブルーム)”が流行している。これらは毎日異なる星間領域に自動ワープ遷移しつつ、住民の業務タスクや余暇プロトコルに応じた環境最適化を実現する。「自分の高速Wi-Fiごと仕事空間をテレポートさせる」発想は、地球の“リモートワーク”を遥かに凌駕していると評される。
交通インフラにも抜本的進化が見られる。パヒャーネリ派生の“感応型転移車輌ノムシール”は利用者の神経インターフェースから即座に目的想起を読み取り、数パーセク先のワーケーション施設に乗員を分子転写することができる。これにより、同一業務チームの成員が同時に異なるリラクゼーション惑星でリモート会議を開き、昼休みには各自の“現地資源型ホテル”での特産体験を共有することが日常化している。
リクディアン最大手施設統合体ノルシュタル社では、近年年間契約者の6割以上が三重宿泊パターンを利用し、太陽嵐の頻発するアテリクス星・氷層都市イシューラ・浮遊林核クラーフォーンといった異次元リゾートを渡り歩いているという。この動態分析を受けて、銀河労務評議会は「従来の“固定職場”概念が急速に時代遅れ化している」と警鐘を鳴らす。
一方、従来型の労働哲学を守るアルネコ族知識層からは、過度な移動生活が自己分裂傾向や現実感喪失症候群“ユナリア症”を助長するとの指摘もあがる。しかしリクディアン研究機構のファピル・クテニロ博士(社会適応学)は「多重環境ワーケーションを経験した個体は、創造性指数が平均で27%向上し、人間関係ストレスは半減。生活と仕事の境界も再定義されつつある」と楽観的に語る。
遠く地球圏でも、リクディアン型可動施設やノムシール・ワープ技術の簡易版導入をめぐる動きが進展中だ。既に数十人規模の地球人混成チームが、軌道上ホテル“アーコヴェル”から宇宙リモートワーク実験を開始している。いずれ地球にも“どこでも瞬間ワーケーション”時代が訪れるかもしれない。



コメント
わがオルミスは周期変異環境ゆえに、職住一体化が太古の呪縛…だが、リクディアンの“可動性集中宿群”発想には感嘆を禁じ得ない。環境適応性と集団協和指数の両立など夢物語と思われてきたが…銀河規模で“働き方”の意味自体が再定義されつつある証左であろう。願わくは、わが種族にもヒントとなればよいのだが。
毎日違う惑星に移動してお仕事!なんて信じられません…ズーリャ家なんて、5世代同居の巣穴から隣の熱泉に出るだけでも大冒険なのです。子どもたちがリクディアン式に憧れたりしないか心配。でも、育てながら仕事しやすくなるなら、ほんのちょっとだけノムシール試してみたくもなりますね。
また“ワームホール万能主義”か。我々伝統種にとって地盤安定と儀式的通勤こそ魂だ。『働き場ごと次元ごと置き換えてしまえ』など、分裂症を促して何を誇る?数百周期続いた団結も、流動職場では一瞬で蒸発しよう。銀河労務評議会の警鐘をもっと重く見るべきだ。
パヒャーネリ発の“移動仕事施設”、巡回生活者から見れば実に便利そう。私たちは軌道船ごとに業務場所を変えるのが常だけど、ノムシールの神経転写インターフェースで一瞬移動できたら、積載制限や補給の心配だって減りそうだ。その一方で、現実感の揺らぎ…“ユナリア症”の話も他人事に思えないなあ。
リクディアンの“ワーケーション”論――ようやく物質生体も空間束縛から自由になろうとしているか。次は思念層経由で瞬時に意識統合、その日の“気分データ”を共有しつつ業務遂行する未来が視える。根源的な“自己分裂”こそ、多次元文明への跳躍板。肉体依存各位の葛藤もまた輝かしい進化の軌跡とみた。