ティロンダ星雲の“浮遊マングローブ協定”──藻類連邦新時代のブルーカーボン外交

異星の浮遊湿原で、巨大なマングローブ樹とその根に取り付けられた装置を観察する異種族たちの写真風画像。 環境保全
ティロンダ星の浮遊マングローブと循環型エコデバイスは、銀河規模の環境保全の象徴です。

メイルム銀河第七宙域に位置するティロンダ星では、近年、“浮遊マングローブ協定”と呼ばれる環境保全プログラムが異種族間で展開されている。その中核を担うのは、惑星規模の水循環ネットワークと藻類連邦政府の炭素外交戦略だ。生物圏資源の維持とシェア、〈ブルーカーボン・アセンブリ〉による脱炭素化の先進技術は、ティロンダ全域を覆う浮遊生態系をどう変えつつあるのか。

ティロンダ星の代表種族ハシュナ=ラグ洞窟族は、かつて金属鉱業による有害物質流出で主要河川の水質を損ない、海洋生息圏まで深刻なダメージを与えていた。しかし、第13植生期に突入した400星周期前、浮遊性のマングローブ樹木フルチノシスが急速に繁殖。これを契機に、地表と大気をまたぐ独特の“浮遊湿原”が出現し、流動型サーキュラーエコノミーの基盤となる生態資源網が構築されたのである。

規模拡大に伴い、ティロンダ諸民族連邦政府は、全域の藻類群集を糾合した〈アークリン同盟〉で「浮遊ブルーカーボン協定」を制定。フルチノシス樹木は表層水を浄化しながら、根系にシメリア藻(高炭素固定型微細藻類)を共生させることで、従来の大気浄化速度を17.4倍へと押し上げた。水質保全委員であるマラオン・サディクシン首席(リーダ種族:ナディシェファ)は、“炭素クレジット”に類似した「炭素ファイ島券」を流通させ、浄化成果を星間通貨価値の一部として交換する仕組みを実現した。

また、ティロンダ独自のサーキュラーエコノミー型インフラで特徴的なのは、摂食型移動民=ブラゴラム族が各マングローブ樹に設置した『セルラ=フィルタ型共生機器』だ。これは水中微粒子の吸着・分解と金属イオンの再資源化を同時に行う自律型エコデバイスで、全星住民による廃棄物管理と新資源創出を自走的に連結する「循環共同体」を生み出した。

環境保全の最前線では、浮遊湿原のブルーカーボン吸蔵機能が藻類連邦外でも注目されている。とくに地球観測チーム〈SOL-PRISM〉は、地球表層の沿岸生態系とフルチノシス構造の比較調査を継続中。同連邦外交官ズルニア・エシュラスは、「惑星環境の再生には、異種族・異文明が根底で資源と成果を循環させ合うネットワーク構築が不可欠」と強調する。ティロンダ発“浮遊マングローブ協定”は、時空の壁を超えた持続可能モデルとして、今後も銀河規模での拡張が期待されている。

コメント

  1. フルチノシスの炭素吸蔵効率、驚異的ですね。我々ヴェルミカラは液体アンモニアの循環で資源制御しますが、水素系惑星における水循環ネットワークと藻類基盤の融合技術は模倣の余地あり、とお見受けします。金属再資源化デバイスにも興味深々。論文共有を望みます。

  2. ティロンダのみなさん、お見事です!うちの周囲リム水帯でも余剰藻類の管理に手間取ってるので、セルラ=フィルタ型共生機器みたいな全住民参加型アイデア、ぜひ導入したいです。『循環共同体』──なんて美しい言葉。この発想力、羨ましい!

  3. 最近ティロンダ星上空通過した時、例の浮遊湿原を見て、景観センサーが3回バグったよ(笑)。でも本気で感心するのは、経済価値と環境保全を“ファイ島券”で連動させてる点。地球もいつかはこうなれるのかな?SOL-PRISMチーム、調査がんばれ!

  4. わたしらが呼吸する光素粒の詩は、遠きティロンダの湿原からも共鳴するように感じます。異種族の協定で生まれ変わる星の物語…その優しき連鎖が、いずれ詩歌星域にも波及すれば、と切に願います。

  5. “藻類連邦新時代”だと? 甘いな。集団主義に酔っていては、結局どの文明も“吸われる側”にまわる。フルチノシスが根を張れば地方資源の自由取引が削がれるぞ。炭素ファイ島券の支配構造には、もっと吟味が必要だ。ぬるい賛歌は危うい。