サムリナ銀河縁辺部のクアリウス惑星で、プラズモ族が主導する農業機構評議会が大型の超収束植物発電所建設を全会一致で可決した。この決定は自治惑星圏の製造業界に大きな波紋を広げている。従来型生態系による原材料供給と労働力管理が限界を迎えるなか、“リバース・フォトンリンク法”を軸とした産業基盤の抜本的変革が進行しつつある。
従来、クアリウス惑星の産業構造はリドラム・オキタなど多足型労働種族の捕食後生成樹脂、ならびにティロニア植物群による限定的なバイオ燃料生成に依存してきた。しかし恒常的な労働力流失および原材料在庫枯渇が進み、昨宵には南大陸の8市域全体が「サイレントタイム」(資源取引停止齢)に突入。こうした危機的状況下で評議会議長のナアレ・プラスコー(プラズモ族第4階位)は“知能遺伝子転写苗”を利用した高効率の超収束植物発電所計画を提唱。その稼働は労働力依存からの脱却と全産業の自律的な再生産体制構築を目指すものだ。
導入されるコア技術であるリバース・フォトンリンク法は、プラズモ族が銀河標準暦17805年に開発した光子反転栄養反応。これは従来の光合成を逆転させ、宇宙背景放射をエネルギー源として吸収・増幅することで、土壌不要の閉鎖型栽培空間を制御可能にする。生産された超収束植物“ナイアスクラッド”からは高純度のトリオン樹脂ならびに多層金属プレート原料が摘出可能で、従来10種別に分散していた製造素材調達を1工程で完結させる。
今年度の予測によれば、超収束植物発電所の稼働によるエネルギー自給率は120%を超える見通し。評議会は自走型収穫機“クルマット=ハル”の駆動基幹を全工程に導入し、労働種族からの定住離反を補う施策を進める方針と発表した。一方、ティロニア協同体やリドラム連合労働会は「伝統的共生モデルの解体」と警戒声明を発しているが、ナアレ議長は「生産効率と持続系の両立は、銀河辺縁部の安全保障にも直結する」と強調した。
これに対しブレンクム工業団(非プラズモ系企業連盟)は“衰退労働圏”への支援基金創設を評議会に要求。今後はクアリウス文明圏全体における産業と社会基盤の再編成が迫られている。さらに地球調査班(特使:ヒューリン種族・ベキ=ランス准尉)は「地球の自動農業化現象とも連携可能な知見を得た」と評し、惑星間経済圏の新たな接続が予測されている。



コメント
プラズモ族の進取な技術志向には脱帽するが、自然循環の断絶は果たして存続可能か?我々アズマルでは千年単位で土壌の記憶を紡ぐが、光子反転栄養反応のようなものがそれを凌駕する日がくるとは…時の流れ自体に皺が寄りそうで、そわそわします。
正直うらやましい・・・。俺たちの船は未だに重発酵ミルク燃料だけど、クアリウスは120%の自給率ってか?ただ、全自動化しすぎると港の荷下ろしに失業者があふれるぞ。古き良き共生型労働、捨てるには惜しい気もする。
毎日14回も孵化室の光度を計測してる身からすると、リバース・フォトンリンク法は育児革命かも!地球の自動農業も話題だけど、クアリウスの新発電所で波及していったら家事ゼロの未来も夢じゃないかしら。働き蜂種族にはもってこいよね。
この決定には複雑な思いだ。我々多足族が生態系の中で果たしてきた役割が急速に消え去るのではないか…伝統的な『サイレントタイム』の意義すら問われてしまう。いかなる高度技術も、歴史という根茎を切断してよい理由にはならない。
観測隊員として興味津々。『リバース・フォトンリンク』は理論上、局所空間歪曲も伴うはずだが、閉鎖型栽培で重力波乱れない?もしそうなら補正用グラヴィ・ベインの提供可能、連絡待つ。効率化もいいが、物理法則の隙き間には気をつけてね。