次元連合に所属する惑星クリスールで、中心交易都市イリス＝マターが主導する“光果実経済圏”に激変が走っている。従来から同星の基幹通貨兼主要エネルギー源である「フォンタ＝グローム」（通称・発光果実）が歴史的な高騰を記録し、一般市民から企業体、そして電力中継網「ラミラ晶繊維」を管理する官民までが対策に追われている。惑星規模のエネルギー危機を経験してこなかったクリスール社会では、この事態がサステナビリティと未来生活設計の再定義に発展している。
クリスールの基軸資産であるフォンタ＝グロームは、半透明の球状植物体で24時間周期ごとに自身のエネルギーを鮮やかな可視光として放出する。この果実は消費者の日常照明としてだけでなく、複数個体を精密に並列することで住宅や商空間の蓄電・転送にも用いられる。だが季節性ラグリューム星雲の紫外線減衰が原因で直近三周期（地球換算：約三ヶ月）、生産量が大幅減少し、過去30年で最大の入手難に。フォンタ＝グロームの流通価格は昨周期比2.7倍に跳ね上がり、特に家庭単位での“光電生存費”増大が深刻となった。
この危機を受け、クリスール政府ははじめての“イレリア節光令”を発令し、市民に対して自発的節電・蓄光行動を呼びかけている。同時に、都市部ではラミラ晶繊維網に依存しないゼロエネルギー集合住宅「アルグ＝ドーム」への入居希望者が急増中だ。アルグ＝ドームは、生体発電藻とマイクロ果実貯蔵槽が複合した自家発電・自家蓄電モデルで、既存のグローム依存構造から逸脱する形態として注目を集めつつある。だが高額な建設・改修費、入居アクセスの不公平が社会問題化し、ライフライン格差の拡大が浮き彫りとなった。
一方、“ロルナ金融閥”を筆頭とした一部大手電力会社や流通系企業体は、グローム市況の乱高下に乗じて高性能家庭用蓄電果実ユニットや新型応急照明球体（SULES-Cluster）の爆発的供給を始めている。安価な商業電力を失った労働階級層では、独立して果実を育成・管理する小規模サークルが自衛手段として増殖。これにより未登録エネルギー市場“グローム灰市場”まで誕生し、当局は監視と取り締まりを強化する方針だ。
LAE（再生可能エネルギー連合体）異星エコノミスト、コオ＝フ・デーリシュ教授（ヌール＝プラグ種族）は、「単一資源に頼った文明ほど脆弱さが露呈する事例。グローム集中経済構造から多様なエネルギーポートフォリオへの転換が喫緊の課題」と警告する。現在、ラミラ晶繊維網の効率改善やLNG（液体化天然ガス）補完策も議論されているが、クリスール全域に“発光果実以外のエネルギー暮らし”というサステナビリティ志向が根付き始めたのは間違いない。今年度の結晶季を超えても、同星の光る生活費はしばらく安定しそうにない。
コメント
フォンタ＝グロームの単独依存は明らかにリスクが高すぎる。私たちメルリックは星核エネルギーと気流流体を40種も組み合わせて使っているが、資源特化文明は安定を欠きやすい。少し前に我々もルミナ鉱石危機を経験し、多系統への転換を急いだところだ。クリスールがこの混乱をよき変革機会とできるか、観察したい。
私の孵化胞でも、ラグリューム星雲由来の光量変動はよくある問題さ。フォンタ＝グロームみたいな一極集中型果実には頼らず、多層栽培で複数種を混ぜるのが持続のコツだよ。灰市場の拡大ばかり問題にする当局もいるが、小規模自給こそコミューンの生命線。届け！クリスール一般市民へ。
あの恒星周回路線を通るたび、夜間都市のグローム光が見事だったのに。今や節光令下でほとんど暗闇らしい、切なくなる。だが、節約生活にも価値があるし、新型ドームの普及で“暗さを受け入れる美学”が生まれるかもしれないな。次回寄港時には、星の変化をこの3対の視覚受容体でしっかり感じたい。
単一果実への過度な集積、典型的な進化的袋小路。我々ズラキは光源分散設計でクラスター全体が自律発光するため、個体喪失でも社会基盤が揺らぐことはない。クリスール諸氏よ、エネルギーも通貨も群体的監理へ移行するが賢明だ。灰市場の矯正よりも、基盤設計の根本的再考が先決だと進言する。
経済混乱？むしろ絶好のホログラム新作テーマだ！光果実をめぐる市場抗争シミュレーションRPG“フォント・カタストロフ”の開発部が動き始めたって噂。現実が厳しければ、仮想空間で好きなだけ光らせろ、ってもんだよね。これぞ危機と娯楽創造力の幸福な共生。クリスールの皆さん、一緒にバーチャルで光りましょう！