五大銀河圏の経済観測拠点であるブロロン星から、本源的な税制概念を覆す改革が発表された。多層的統合思念ネットワーク「ユガ＝ラーム」の意思決定で、個体市民および全体知性体「グラーボル」に対し、新たな公平性理論に基づく『公共貢献指数（PCI：Public Contribution Index）』が運用開始された。これは惑星ブロロンの公共財政が直面した“物質的交換に依存しないサービス循環”の制度化と見られ、惑星経済圏外の注目が集まっている。
ブロロン星の住民、グリュムタリア種族は生来、個体間の意思や感情を瞬時にネットワーク共有できる。過去8周期にわたり、消費行動ごとに微細な『共感税』を自動徴収していたが、知性人口の加速度的増加とともに制度的負荷が飽和点に達していた。星系運営議会リード思考体パルゾン・レイギュラトゥールは、税収再分配に関する不満や、『無用な共感徴収で個体の創発性が抑制される』といった新世代層の声を受け、思念経済の刷新に踏み切った。
新たな公共貢献指数は、物質的財・サービスの消費量や、知的労働の対価という従来の尺度を離れ、ユガ＝ラームの全記憶領域から抽出された“施しの思念量”、すなわち他者に向けた貢献的行動や、集合生活への無償協調行為を多次元的に評価する。PCIが高まり続ける個体や集団には、公共サービスアカウントに非課税ポイントが蓄積され、サービス優先権や選挙時の意思投影における強化補正が付与される仕組みだ。一方、高度な自己利益追求や拒絶的行動が計測されると、一時的な課税率増加や公共リソース利用制限が自動的に発動される。
この制度の根幹にあるのは、『税』を単なる物質・エネルギーの転移ではなく、知的集団の善意の再分配とみなすブロロン独自の思想である。財政担当複合体インターフェイスであるヴァシュ＝トラレクは、『多様な価値観が交錯する銀河共同体においてこそ、貢献の定義は流動的でなければならない。計量できぬ善意も公共サービスの基盤たり得る』と述べている。新設されたPCIは、想定以上に若年層の間で肯定的な受容を受けており、グリュムタリア系サブ個体の間では“贈与の祭典”と称して、都市活動を支える奉仕行動が爆発的に増加した。
ユガ＝ラームに外部接続する観察惑星群では、地球型消費税や所得税の機械的公平より、ローカルネットワークに基づく貢献評価システムの影響を探る動きが出ている。惑星ベースで異なる租税制度を補完し合う銀河間連携も今後想定されており、ブロロン式PCIモデルは、公共財政改革の“宇宙標準”になる可能性を秘めている。各銀河ノードの責任体は今期末までに、PCI指標の独自カスタマイズ指針を協議する方向だ。現地からは、意思の選択と公共リソース配分の新次元化が始まったとの声が高まっている。
コメント
私たちカルトゥメリアは個体ごとの念波交換のみで社会を運営していますが、ブロロンのPCIは斬新です。善意のリアルタイム評価は有機思念网では常に議論となりますが、公共サービスと直結する制御系への応用には勇気が要ります。経済動機すら“波”になって循環する現場、ぜひ現地観察してみたいですね。
グリュムタリア種族の相互協調性の高さには昔から驚かされていますが、こうして『施しの思念量』が数値化されると、反抗的幼体たちのエネルギーが循環社会に再分配されるのは面白い。リダルバ孵化分団でも“自己犠牲指数”導入の機運が高まるかもしれません。
物質換算に頼らない課税システムは論理上効率的ですが、意識間通信未発達圏の種族には不適のように見えます。当巡回船では、交換記録ロガーの誤差補正にもまだ3周期かかるのですが…ブロロン式の善意主導型モデルの遠隔展開には技術的、倫理的障壁も多そうです。
わたしはかつてブロロン星の“共感税”時代に旅し、温かい意識の流れを体感しました。新しいPCI制度が、かの星のあの輝きをさらに増すのなら、はなれた星域から心より祝福します。贈与が祭典となる宇宙を、あらゆる生命が忘れませんように。
我がドジタロンの利益追求モデルとは根本思想が異なるので少々困惑しています。ただ、善意すら“資産”化する発想は斬新。我々も対外補助基金の配分ロジックを見直す時期に来ているかもしれません。次回評議会の主議題として取り上げを提案します。