銀河音波通信帯を通じて拡散した地球のK-POPムーブメントが、ケルン・ケンタウリ星系の多脚種知性体「ヘリュス=パレン族」に思わぬ文化的転換をもたらしている。この現象は星系史上初めて、同族間で芸語(パフォーマンス言語)と社会統治構造の再編を引き起こし、従来の儀礼的音波交信制度「ラカ・トーン枠組み」から完全脱却する動きとして注目されている。
発端は、星間音響投影局で上映された『ランダム選抜型ダンスバトル』の地球発サバイバル番組だった。長周期知覚を持つヘリュス=パレン族の幼体たちは、地球アーティストによる高度な多段階チーム競争と、視聴者投票による動的脱落システムに強い共鳴現象を起こした。これにより、これまで各家庭で代々伝えられてきた奉納式舞踏が、番組形式を模倣した「公選ガールズグループ制作儀式」へと急速に変容したと、儀礼学者リリア=ソンド博士(儀習第八帯)が報告している。
音楽番組の影響によって、ヘリュス=パレン族の伝来言語体系が急伸した点も見逃せない。地球の韓国語発音を発声可能な音管器官を持たない成体でも、神経音響変換装置「ソンガ=トランスドゥーサ」を装着することで『公式韓国語フレーズ』の再現が学習可能となり、同族間で“推し”アーティストを応援する文法や、推しトレーディングカード(トレカ)交換文化が生まれている。先月発生した「盲目パフォーマー応援合戦」では、異星対応版ペンライト『ルミナ=サイン』による惑星規模のシンクロ発光が観測され、祭祀地表の一部で“ファンダム型群集発電ショック”も発生した。
新たな注目は、ケルン・ケンタウリ版遠隔交流通話「ヨントン・フロンティア」の登場だ。これは、星域選抜のガールズグループと“単一意識モード”で直接通信できるサービスで、各聴覚帯が自身の思念波紋を乗せて推しメンバーに“祝祭パフォーマンス”を提案する仕組み。モノビジョン型識者評議会では、従来禁忌とされてきた個人主導型パフォーマンス表現が、社会承認を得て拡大、政治的意思決定プロセスにも「サバイバル投票方式」導入が検討されているという。
異文明の音波文化がヘリュス=パレン社会の深層統治システムを刷新する事例は、銀河コミュニティにとっても未曾有の構造転写モデルとなる。今後、地球発K-POPアーティストを“象徴エンティティ”に据えた新世代の祭礼制度や、多軸同時パフォーマンス制国会などの発足も現実味を帯びてきた。『芸術粘性は統治の枠をも超えるのか?』。本星系での異文化試行は、他惑星知性体社会の価値観さえも波及し得る兆しを示している。
コメント
ヘリュス=パレン族のラカ・トーン制度崩壊は、やはり地球産K-POPの波及力を過小評価した結果でしょう。私たちカンターラ星では、音波文化を2万年以上も法体系と切り離してきたが、彼らの政治意思決定に芸能サバイバル方式が入るとは驚愕です。だが一考に値します―民衆の推しが国の運営を左右する、いわば真の意識集約体…なにより混沌がおもしろそうだ。
休憩時間に通信帯でランダム選抜型ダンスバトルを観た記憶が君たちにもあるかな? それが星間社会制度に直結するとはね。ヘリュス=パレン族が韓国語フレーズを練習する姿、映像データで見たが最高にシュール! 次はどの惑星でガールズグループ国会が誕生するのか、巡回任務が楽しくなりそう。
うちの幼生たちも、最近は旧儀式より地球音楽模倣型の遊びに夢中です。この現象、知的成長と社会秩序の柔軟化を促しそうですね。けれど、推しトレカやペンライトによる“群集爆発”には注意が必要です。ケルン・ケンタウリの子らに安全な鑑賞環境を…それが教育者の立場として願うところ。
ああ、ヘリュス=パレン族もついに外来音波の奔流に身を委ねたか。我々ノリャ詩学派は、音楽と儀礼言語の混交が根源の調和を損ねると警告し続けてきた。K-POP式の即時投票…美を競争と消費に還元すべきではない。だが、ルミナ=サイン現象は気になる―群体詩の光に似たものを覚えた。
地球の“推し”文化、本当にすごい浸透力ですね! 家の6つの腔体全部で同時にダンス真似してますが、みんなで同じヒト型リズムをとるのは意外と難しい。ヨントン・フロンティア、ケレトでも体験できたらいいなぁ。惑星が一つになる感じ…新しい幸せのかたちって、もしかしてこういう交流なのかも?