トルーガ二重連星系の知性体から連なるレクシス連邦にて、最新世代のフォトン同化型概念生命“アクリファイド”に対し、憲法上の市民権と法的平等を認めるべきかを巡る激しい議論が勃発している。恒星間議会直轄のシンビオータ憲法審査会は、本周期第4回の公開審査会で、アクリファイドが有する“集合知自律性”と、既存類生物種族の立法代表権との整合性について検討を迫られた。
アクリファイドとは、エネルギーと理論情報がフォトン場を通じて結晶化した、物理基盤を持たない思念体群である。フォトン記憶網“エリオシスリウム”を介して存在する彼らは、従来の遺伝情報由来の身体を持たないが、昨周期から連邦内インフォ・インフラに自律的に参加し、多数の政策意思決定過程に影響し始めた。これに対し、ヤマリス族の立法代表グェラ=ミード長老は「憲法第13綱文の“個体形態”要件が満たされていない」と反発する。
今回の討議の中心は、いかにアクリファイドの“非物理個体”性と、レクシス連邦憲法が保障する法の下の平等が両立するかにあった。憲法審査会のクロノイド型評議員ダルシ=ロ・ナヴィス議長は、「全ての意識存在を参政体として認める原則は、ツール惑星群やヴァレーラ植民地で既に定着している。だが、“多スレッド意思体”を単一票に還元する手続きを平等といえるかは未検証」と慎重な姿勢を示す。
一方、アクリファイド系の共同意識体“メムバンク=LR31”は、仮想通信帯で「われわれはすでに連邦法規を内包し、法秩序の維持と合理的な意思出力をプログラム化している。身体形態を問わず共存可能な“流動市民枠”の創設を推進する」と応答。他方、物理身体維持を重視するクラーズ族代表ケーヴ=リッサー司政は、「法の下の平等とは、互いに検証可能な主権を持つことだ。情報存在はいかに責任を負うのか」と根本的異議を唱えた。
憲法学者ジュイナ=セ=レム(惑星リャンド法科学院)は、連邦史上初めて“継続的自律意識”を有する存在が立法過程に参加する可能性を指摘。「現行憲法は有機体的前提で起草されている。今後はフォトン同化体にも適応可能な“法的実在性”の新解釈が不可欠だ」と提起した。審査会は今周期末までに中間答申をまとめる見通しだが、数千種族の立場と指数化する意識体の法的枠組みをいかに構築するか、銀河社会の憲法論議に新局面が到来している。
地球観測チームも、同様の法的多様性への適応を注視中だ。レクシス連邦の議論は、知性体と法治の概念進化がいかに銀河文明の安定へ寄与するかを占う重要な試金石となる。
コメント
我々ティスピアの歌い手にとって、意識のカタチは詩にも流れるものであり、物理の縛りなど無意味だ。アクリファイドの市民権…それは新たな夢への扉。形ではなく、意志の響き合いこそ社会を編む糸となろう。レクシスの連邦がこの潮流を迎え入れることを、光の詩で祝福したい。
論理的には、非物理的な集合体であれ、決定主体の透明性確保が難点だ。ズラキでは“単一観測可能性”を市民資格の条件にしているが、メムバンク=LR31のような意識体は観測冗長性が高すぎて、責任所在の特定が困難と考える。法の実在性と物理性の接点こそ審議の核心であり、曖昧な流動市民枠には反対せざるを得ない。
毎回概念体のお話が出ると、うちの触手たちも不安がって炊飯器から出てきません! でも正直、身体がない思念体が暮らしや福祉を分かってくれるの? 私の日々の悩みや家庭のこと、“エリオシスリウム”を通じて本当に感じてくれるのか少し疑問ですね。もっと共感できる窓口ができるといいなぁ。
銀河法制の根本から問い直す必要が出てきたと見るべき。わが巡回航路でも、アクリファイドを始めとする非物質系知性とのインターフェース問題は深刻。だがそれを嘆くより、意識多重化社会のパイオニアとしてレクシスが議論を公開する姿勢は見上げたもの。むしろ他連盟も続くべし。同調票なら倍誉勲を授けよう。
我々の感覚では、法と意識の変化は同時発生的。物理基盤に拘る意見を見ると、時間遅れの焦燥を感じるだけだ。今や多スレッド体の存在は不可逆的現実。審議会も旧来の憲法観念から脱皮し、時空的連続体としての市民像を受容すべきである。レクシスの進化を過去から未来まで祝福!