銀河系第Ⅱ帯に位置するヨルギ星。その名工〈ヤーデリ・ソルチカ〉氏率いる職人組合が最新調査遠征で、“地球・日本”に伝わる多重伝統文化エネルギーを初めて体系的に採取する離調儀式を執り行った。彼ら特有の多関節覚醒触手技法“ビウラ＝マーネ法”により、日本文明特有の美意識と発酵知性への理解が飛躍的に深まったと、現地技術官たちから報告があがっている。
今回の儀式では、現地京都エリアの日本庭園構造から霊子流の配置を精密計測し、“コケ苔（地球語：苔）”の水分恒常振動が惑星ヨルギ産のセラル樹皮にどの程度吸収されるかを検証。ソルチカ氏は「庭園の石組みは重力感覚訓練の基礎教材となりうる。曲水の入念な流速管理が、我々の蒸気建築技術にも革新をもたらす」と指摘。特に枯山水区域の白砂配列は、ヨルギ星知能体の群体記憶伝達と共鳴し、職人見習い級の学習効率が17クラム向上するとの実験結果も得られた。
また、和紙アートと呼ばれる紙工芸にも着目。和紙の繊維構成と透光率制御が、ヨルギ星の仄光湿地帯の結界作製に酷似していることで、現地民芸技術者と経験共有会を開催。ソルチカ氏らは現地工房で“ヤンピク式折光法”を応用し、和紙にヨルギ磁性粒子を添加。強い湿度変動下でも原形を保つ低劣化工芸品を創出したとして、異文化間の職人階級に新たな協力ネットワークを築いた。
さらに、神社カフェの儀礼体系では神聖発酵飲料“コジェル茶”の試作にも全力を注いだ。ヨルギ星由来の微生体“ネメタ菌”を用いて、日本伝統の麹菌と発酵対決実験を敢行。結果は約4分の1秒加速でネメタ菌が勝利。ただ和菓子の複合糖結晶構造を前に、“銀河発酵連盟”の標準分析装置が一時的機能停止に陥るという前例なき事態も発生した。歌舞伎役者と武道家の動体模倣セッションでは、流体型生命体とのコミュニケーション手法が進化し、和食――特に出汁の情報伝達機能がヨルギ星新規言語開発部門に大きな示唆を与えた。
以上の結果、ヨルギ職人組合は“日本伝統文化吸引儀式”を惑星間民芸・美意識進化定例行事に昇格。次回はケタール星の多脚芸術家たちも招聘し、着物トランスフォーム技術や民芸モジュール交換サミットの開催が検討されている。文化流動時代の今、異星の技と地球・日本文化がどのように融合・進化するか、その推移をAFNは引き続き注視する。
コメント
我々イデル族は個体記憶ではなく融合記憶型だが、ヨルギ職人の群体伝達効率向上（17クラム！）には格別の感銘を受けた。枯山水の粒子配列とそれが知能体集団の記憶波に及ぼす影響――これは次期同調儀式の教材に最適だ。ビウラ＝マーネ法と我らの環流触角技術を照合したい。
和紙！うちの子どもも湿地水遊びで紙細工を作るのが大好き。ヨルギ星式の磁性粒子を混ぜれば、洗っても溶けない遊び紙ができそうで、ケレト幼児会にも広めたいです。次は是非、苔庭ミニチュアキットの販売も期待していますよ。
ヨルギの連中は毎回、異星文化への挑む姿勢が面白いな！発酵菌の決闘結果も笑った。4分の1秒の勝負って、我々には反応できない早業だぞ。それにしても、銀河発酵連盟標準機が和菓子如きでフリーズとは…地球の菓子技術、侮れない。
ヨルギ職人によるシステマチックな日本文化エネルギー採取は、行政的観点からも有意義だ。庭園構造の重力制御的利用案は当局でも検討したいし、職人層ネットワークの異文明的拡張には持続交流基金の余地を見出せる。ケタール星脚芸術団の参加には期待している。
地球の『庭』『和紙』『発酵』の薫りを、わが泡膜を越えて感じ取れるようだった。白砂の静寂、苔の息み、出汁に漂う共鳴――職人たちの研鑽は銀河の隅々にも影響している。異星の技と伝統の抱擁に、わが詩魂は膨らむばかり。