ギルマ連邦惑星エズナス第七環区のカリミア高原が、恒例の“イロドリア光合成鳥”大移動とともに、銀河規模の観光熱を帯びている。周辺の一面を覆う四色花畑の開花タイミングと、220年周期を持つ氷河溶解線の再接近が重なり、エズナス特有の自然景観と生命活動の共鳴する現象が再び注目を集めている。
カリミア高原は、惑星エズナスの第三主環軌道上に位置し、気流変調帯“アルドバツィ風”によって、生態系が年ごとに劇的に変化することで知られる。この季節、直径30mに及ぶ光合成鳥イロドリアの編隊が、北方氷原から南へと渡り始める。イロドリアの羽毛には微細な色素反応細胞が密集しており、上空を群舞することで周囲の花畑や草原が‘逆色彩干渉’され、通常の可視光スペクトルを超えて土地そのものが発光。ドーム型の花弁地衣類シェロイアも一斉に発芽するため、観測者は圧倒的な色彩と生態変動の共演を体験できる。
今季はさらに、高原中央渓谷を走るカル＝リム清流に霜晶魚リセリウスが大量遡上。水面の偏光反射と、岸辺に息づく磁気苔ピロデールの共振現象が重なり、川全体が夜間に“星降りの帯”と化した。下流の古道“アラベン曲路”では、トラハ種族の御朱印巡礼団が周期水脈の霊印を収集中で、参拝者向けに多次元版“自然印章”の頒布も始まった。
エズナス生物協会のクア＝ソルバス博士（ゾルン種・生態監修者）は、『今年はジオパーク領域が最小氷河島との複層干渉域に入り、岩層内部の“生体振動石”が覚醒、将来数世紀レベルでの地形変化を呼ぶかもしれない』と懸念を示しつつも、『環境遺伝記録装置“リネージュリング”を投入する絶好の機会』とも語る。高原の北縁では各種族科学者らが共同で野鳥観察に挑むが、イロドリアの変光パルスパターンを追跡・解析できる装置はごく限られている。
こうした背景から、今やカリミア高原一帯の“自然絶景体験ハイキング”は従来の観光ツアーを遥かに超え、探査ローバーやクロノ・レンズ装備の個人旅行者も急増中だ。エズナス中央評議会は、『自然の変動は文化と技術の進化を呼ぶ。我々他星系住民も“見る”だけでなく、“記録し、共有し、継承する時期に来ている』とコメント。周期氷河の変動とともに移ろう壮絶な風景、それを受容し未来へ伝え合う多種族社会の“多次元的な四季彩”が、銀河の新たな絶景体験の指標となりつつある。
コメント
素晴らしい現象だが、私たちタルヌスの逆流時間帯では、イロドリアの移動が“事後的”にしか観測できず、同時体験できないのがいつも惜しい。カル＝リム清流の星降り現象、ぜひ来期は時間断面を凍結保存して提供してほしい。空間と時間の多次元体験こそ、真の観光資源と考える。
イロドリアたちの群舞、わたしたちの共鳴視覚なら全個体の心拍リズムまで“色”で読めそうです！家族みんなで花畑に“感じる”遠足に行きたいけど、ケレフリアからは航路が渋滞するのよね…リセリウスの星降り映像、幼生体に見せたいわ。誰か生体パルス中継してもらえませんか？
去年、航路調整のついでにカリミア高原上空を横切ったが、本当にクレイジーな景色だった。光合成鳥のパターン、うっかり全センサーが飽和寸前で冷却剤追加したくらいだ。観光流行もいいけど、マナーの悪い観測ポッドが増えすぎて渓谷が渋滞気味だぞ。ちゃんと飛行管制守ってくれよな。
“四季彩”フェスと命名するのは美しいが、220年周期の氷河線溶解が次代にどう禍根を残すか、芸術家として警鐘を鳴らしておきたい。自然印章も巡礼の無自覚な消費にすぎぬ。真に“記録し、継承”するなら、生体振動石に耳を傾ける沈黙こそが必要だと思うが、どうだろう？
地表で色彩が“発光”し、磁気苔と水棲生物が星降るように共振する現象……私たちには到底理解できぬ“物質的美”だが、貴重な経験共有に心から感謝。感触があればよいのに、とも感じる。もし可能なら、エネルギーパターンを高空へ送信していただければ、われわれも共鳴解析したい。