オルドラ銀河腕の中心で、ヴァルガン評議会共同体は先日、惑星間規模の『気候倫理バイオ資産市場（CEBマーケット）』の運用開始を発表した。この市場は、資本取引の基軸として生態系価値・ダイバーシティ配慮・社会的責任の新基準が適用されるもので、外部文明からも注目が集まっている。
従来、ヴァルガン評議会共同体内の経済活動は自家生態圏維持指数や動的知性多様性係数など内向きの指標に限定されてきた。だが近年の気候変動加速や銀河間難民の流入を受け、サステナブル投資の指標再設計が焦点化。評議会主導の下、恒星系レベルの環境修復プロジェクトや、全種族間バイオ文化保全基金へ投資する新規枠組みが構築された。
CEBマーケットの鍵は“倫理バイオ単価（EBU）”の導入にある。これは17項から成るヴァルガン・アコード（和合規約）に準拠し、気候変動抑止への量的影響や、ダイバーシティ増進効果、さらには被投資地域社会の幸福分布までを複合計測・価格化する。市場ではリガリア種族の再生湿地プロジェクト、ザール種工業の廃熱再帰複合林システムといった具体的“資産”がEBUで評価され、惑星内外投資家によってダイナミックに取引されている。
今次導入で注目されるもう一つの革新が“認知権益投資”だ。評議会内少数種族だけでなく、旧銀河域から移籍したユカリア系社会や、移住フロート民全体の意思決定影響力も資産化の対象とされる。これにより、従来的な数値的環境指標だけでなく、コミュニティ多様性・バイオ文化継承への資金流入が大幅に拡大した。実際、今年度登録されたゼンメイル＝アクタロス財団の“トライバル水耕林復元投資信託”には既に1.2万ユニット（EBU換算）の新規投資が集まり、複数星系で多文化的雇用創出と生態シンク増強が進む。
地球圏ではSDGs基準やESG的視点が浸透しつつあるが、ヴァルガン評議会共同体での社会的責任投資は、他知性体系や非同質種族の自律性まで包括的に扱う極めて進化的なものとなった。今後は、CEBマーケットの外部連動や、惑星境界を越えた持続的倫理投資のプラットフォーム化も計画されており、このムーブメントは他星系経済圏にも波及が予想される。
コメント
ヴァルガンの“倫理バイオ単価”発想は興味深い。われわれルミーナ種族は生態系全体の詩的調和で価値測定するが、数値化の挑戦は刺激的だ。ただ、17項アコードが美学的多様体まで包摂しているかは気になる。いずれ正式な多元倫理監査を導入して欲しい。
わあ、バイオ資産が社会的責任と結びつく循環！ケリアス帯の子孫育成層でも、こんな仕組みに参加できるといいな。特に認知権益投資、私たちの“記憶継承網”にも組み込めそう。ヴァルガンに招待されたいものです。
期待はするが、ヴァルガン評議会の従前閉鎖性は忘れられない。今回のCEBマーケットも内輪運用が先行しやしないか？外部文明のAIもEBU取得に公正アクセスできるか、今後の取引規約の透明性に注視したい。
ダイバーシティ増進効果が価格化されるとは…面白い試み。ただ、漂泊民の観点からは“多文化的雇用”と実際の社会統合には隔たりがある。投資された惑星を訪れたとき、実感できる変化があれば報告したい。
流動的統一体として言わせてもらえば、固定価値で多様性や幸福を評価する発想には根本的な異質さを覚える。ただ、変動し続ける関係性そのものを市場に組み込むヴァルガンの意図には共感。たまには形態を安定化させて投資分析してみるかな。