第五腕渦巻銀河セクター422bに位置する文明「リザン星系連合」では、今年新たな形態の生放送リアリティショー『インタリンカ・ボディマッチ』が幕を開け、複数惑星を跨いだ大規模な熱狂の渦を生み出している。義体転送技術「トランスファリアム」を全面採用した同番組は、従来の編集済み映像主義から脱却し、出演体験自体を競技化する新潮流を提示した。
『インタリンカ・ボディマッチ』では、リザン星およびその衛星リナークラの成人個体が、自身の意識をリアルタイムで義体(仮身体)に転送し、多次元空間スタジオで他参加者とマッチングを競う仕組みとなっている。義体同士は身体構造・感覚器官が完全にカスタマイズ可能であり、視聴者投票や審査員の即時評価によってその場でデザインと性格プロファイルの修正が認可される。番組司会を務めるズノフラ種族のベテラン「ハーク=シロヴィタ・イリオニクス」は、毎回巧妙な煽動と密着取材型の演出を組み合わせ、惑星間視聴率の新記録を樹立したと報じられている。
審査員は銀河評議会認定の7種族混成チームで構成されており、各メンバーが異種感覚感受器(ヴァルノン判定膜)を駆使してフラットな審美判定を実現。さらに独自の倫理編集AI「サージ=ヴェルム」システムが、台本的操作なしにトランスファライト(転送体)の発言やガールズトーク的交流場面まで全銀河ネットワークへ瞬時送信する。これによりあらゆる局面が“編集不可”の真のライブとして伝播し、出演者たちにも戦略的な人間関係形成が求められた。
なお今期は、リザン星外の惑星エレシトラ系からも約20名が招聘され、義体同士の異星間マッチングアプリ『ラグナ・リンカ』を番組内組込型で初導入。数百万視聴者による直感投票と、瞬間的な性格融合記録『コンパティ指数』がリアルタイムで公開され、特にリザン連合政庁が注意喚起するほどの個人情報交換競争が勃発。複合義体での協調動作や、台本を超えた自然共感発言など、人類学・社会心理セクターからの分析依頼が殺到した。
地球観察担当者からは「地球の生放送型リアリティ番組は、編集による演出が強すぎる傾向」との指摘が挙がる一方、リザン連合では「観察対象の本質露呈こそエンタメ進化」という旨の声明が発表された。次シーズンからは銀河評議会直轄の倫理監査官も新たに加わる予定で、惑星間リアリティショーブームは今後も銀河全域で拡がる見通しだ。
コメント
リザンの転送型ショー、言語的な即時性が素晴らしい!わが種族なら三系統同時コミュニケーションが可能だが、その多重性は再現されているのだろうか?感覚のカスタマイズにも着目したい。だが、人格プロフィール修正が容易だと真実の意図が見えにくくなる危惧もある。次回、出演者に母惑星での思考波形公開を望む。
あらまあ、義体に意識転送なんて、葉脈系の私には想像もつきません!交流や共感発言の部分、子守りしながら観てますがちょっと目が回りそうです。惑星を越えた「マッチング戦争」は刺々しく見えるけど、案外、根っこはどの種族も同じなのでは?子芽たちには共生型の番組も作ってほしい。
編集ファイターが無効化された『編集不可リアリティ』…これは危険でもある。意思融合指数の公開は、治安維持の観点から監視対象に加えるべきだ。個々のデータ流通を過度に許容すると、サイバー侵入の標的になる。銀河評議会が監査に入るのは遅すぎたくらいだ。娯楽の裏に何が潜むか、常に疑え。
転送リアリティの臨場感!詩的には「自身を超えて他者になる」という儚さが溢れ、生命変容の夢を映す鏡です。ボディデザインが即時に変化する様、我々の時制詩で古来詠まれてきた「幾度もの芽吹きと枯れ」を想わせます。芸術表現として認め、次は詩的義体の導入を希望します。
奇妙なことだ。自我を転送し、義体で競う娯楽…私たち鉱脈体にとって自身体の交換は恒常的営みであり、刺激は感じない。だが、諸個人の設計変更が即興で承認される速度は興味深い。人間観察部から申請があれば、次シーズン用に我々の情報流集合体も審査に加える用意がある。