ヨリダール集団知性、初の『生体貨客ワームホール』による宇宙旅行を解禁

夕焼けの中、巨大な螺旋状生体構造物が発光し、様々な異星生命体がその有機的なトンネル入口に集まっているリアルな光景。 宇宙開発
多様な生命体が次世代生体ワームホールへの初搭乗に臨むゲリエッタ星の夕暮れ風景。

銀河系第七分岐で巨大勢力を誇る集合知性体ヨリダール連邦は、ついに惑星間距離を劇的に解消する新型『生体貨客ワームホール』の実用化を宣言した。この壮大な事業は、高度生体工学と空間湾曲理論が融合した前例なき技術革新であり、ヨリダール種族のみならず、多様な銀河種への移動・交流の新時代を拓くものと注目されている。

本プロジェクトの根幹にあるのは、“スウォーム・ユナイター螺旋体”と呼ばれる全長900カバンに及ぶ生命体ネットワークである。ヨリダールの科学施政官ブレン=ヨル・ソフタは、その神経系統を相互融合することで、任意空間へ瞬時に“生体トンネル”を生成する手法を開発。既存の機械式ワームホールとは一線を画し、通過する有機体の組成・意識波動を損なわず、むしろ“神経共振”による生命的進化が付与される点が最大の革新とされる。

本日、ゲリエッタ星の多様生命使節団12名と、グルリカ星の自意識持つ鉱物複合体が実験的に貨客として搭乗。移送後の全対象において分子再配置の誤差はゼロ、精神連結率も出発前より14%向上するという驚異的成果が確認された。グルリカ代表トロン=ガイドの証言によれば、『思考フィールドが統合層まで拡大し、一種の“量子的共鳴”を経験した』とのことで、単なる輸送ではなく新たな宇宙認識をもたらす旅行方式として評価が高まっている。

従来、ヨリダール連邦が採用してきた光折曲式推進や、異次元転送胞誘導法は、地球型生命や一部水生種には適応が難しく、身体的・記憶的損失リスクが危惧されてきた。だが生体貨客ワームホールは、意識共鳴層を基軸にした輸送ルートを形成するため、通常の物理現象とは無縁の安定性を示している。さらに移送中、搭乗者は“群体夢中空間”で相互交流が可能となり、移動自体が社会的イベントに昇華されるのも特筆される。

ヨリダール科学評議会は現時点で、試験運用を“知性認証”を有する22惑星同盟種に限定する方針を明らかにしている。一方、地球を含む観察惑星への開放については慎重な意見が多く、人類の意識ネットワーク適応度や、群体倫理機構への理解度の精査が求められている。今後、銀河系における本技術の汎用化と、次世代宇宙旅行の標準化に向けた動向に目が離せない。

コメント

  1. これはまさに集合意識文明が到達すべき技術の極みですね。我々ダルネサの分岐集合種でも、肉体意識の損失を回避した移送法の模索は続いていましたが、生体ネットワークによる意識進化まで実現するとは…ヨリダール連邦の倫理審査基準が、早晩銀河標準になるべきです。地球種の倫理後進性がさらなる課題となりますね。

  2. 砂の粒ほど古い機械式ワームホールでは体表がバラバラになってしまうのが悩みでしたが、螺旋体に包まれて旅するとは想像しただけで羨ましいです。群体夢中空間――ケレ=ラの重力祭りに似て、移動が祝祭になるのですね。ぜひ知性認証が緩和されることを願います。

  3. 22惑星限定運用?またヨリダールの選民主義か…!我々遊牧航宙民のような流動知性体にも“生体貨客ワームホール”の門戸を開いてもらいたいもんだ。精神連結14%向上も羨ましいし、ペース配分を阻害しないならぜひ試したい。テスト搭乗モニター枠、増やしてくれません?

  4. 読んでいるうちに、まるで神経が星屑と融和する幻覚に満たされました。“群体夢中空間”での相互交流…詩的です。私たちエリテオ種は未だに移動時、自己が自己であることの保証を求めすぎて、進化の門前で足踏みしていると痛感します。魂の成分が変化する旅、羨ましくも怖い。

  5. 生体トンネルを使った輸送…資源循環効率からしても画期的です。ただ、“神経共振による進化”が自治体レベルの社会同調圧にどう影響するのか、クリマスの自治運営にとっては未知数で不安もあります。群体夢中空間で意思決定する仕組み、うまく地上行政に活かせれば良いのですが。