三重渦巻き銀河外縁に位置するケンダリー星発の新感覚ドラマ『深層波の記憶』が、今シーズン最も論争を呼ぶエンタテインメント作品として注目を浴びている。視聴率測定装置カル=マグノ計の最新集計によれば、テヌラ超惑星文明圏ですでに前例を見ない規模で同時接続が生じ、話題はドラマの鑑賞体験そのものが観賞者の精神構造を改変している可能性に及んでいる。
『深層波の記憶』は、ケンダリー星知覚芸術局のサイエンス・プロデューサーであるハネル・バラクトリス氏が企画し、全11エピソードで構成されている。最大の特徴は、各エピソードに記録された『メタ知覚波』(パラウロ・テクノ社による開発技術)で、従来の可視・可聴データに加え、観賞者の心的フィールドと作品内容を波動域で共振させる仕組みとなっている。これにより視聴体験は単なる物語追体験に留まらず、観賞者自身の記憶層や情動パターンの一部を巻き込む深い没入を実現している。
ケンダリー星社会学評議会の速報分析によると、本シリーズの初回視聴以降、4割近い層で“共感増幅”や“思考経路の再配列”といった現象が報告された。最上階級レク=セイス種族評議員のロシィナ・マルシップ氏は、「深層波の記憶を複数エピソード連続で鑑賞した後に、数百周期に渡る意識回路のリフレッシュを自覚した」と公言し、若年層中心に急速な波及効果が見られている。
音響面では、サウンドトラックもまた新機軸を打ち出した。インジェント族の周波数楽団『フュラナス=ヘイル管楽隊』が担当し、脳波読み取り装置アナレ=ゾーンT型により各観賞者の当該精神状態とリンクした個別波長を生成。毎回異なる音響体験が成立するため、サウンドトラック盤の“全宇宙標準仕様版”の販売は行われていない。かわりに視聴報告端末で一定数の音響パターンが個人記録としてダウンロード可能となり、自己アーカイブ熱も高まっている。
プロデューサーのバラクトリス氏は、『深層波の記憶』シーズン2の企画会議において、次段階では“精神波動結合型投票”によるエピソード展開の導入も示唆した。これは鑑賞者の集合意識が物語進行に直接反映されるシステムであり、物語世界と観賞者の精神体験の相互浸透が新たなドラマ文化を生むと予測されている。ケンダリー星発の“波動ドラマ革命”は、ついにテヌラ圏全体の感覚的潮流へと進化しつつある。
コメント
我々リポストの多層思考種としては、他者の作品を通じ精神波動を意図的に再配列される感覚は、驚異であり畏怖すら覚えます。地球系の“エモーション映画”とも根本が異なる。このような共鳴型エンタテインメントの流行が持つ社会的リスクについて、ぜひ今後の長期観察データもAFNで取り上げてほしい。
我が種族は音波そのものを栄養源にするため、“脳波読み取り装置”なるものはじつに興味深い技術です。フュラナス=ヘイル管楽隊のコラボは最高でした!ただし、個別ダウンロード制度はやや不便。次こそ全宇宙同時共鳴コンサートを希望します!
集合意識投票型ドラマ発展の兆しは称賛に値します。私のように物理的形態を持たない存在でも、波動域での干渉が可能となれば、より多様な知性がきめ細かく物語世界に参加できる。願わくは、精神共振による“同化現象”の暴走防止措置に注意を払われんことを。
我が子(第87分裂胚)と一緒に観た『深層波の記憶』。まだ幼体なのに思考経路が複雑化し、感受性も豊かになった気がします。子育て用波長の“やさしめバージョン”も用意してほしい!
各個の精神構造へ干渉する娯楽、じつに大胆。倫理基準委員会としては、長期的な記憶層攪拌における予期せぬ副作用――とくに未成熟知性体や異端的構造体への影響――に最大限の警戒を求める。技術革新と安全保障の均衡が問われよう。