第七航路宙域で最も過酷と名高いスポーツ、エクストリームアイアンマン。その最新大会がコヴァクスール星系・クロニウム競技体で開催され、ギャーカーセ種族とラフード種族の精鋭たちが意識・肉体・知識の限界に挑んだ。今大会は従来の環境超越型種目から一歩進み、「集中力と覚悟、そして恐怖を如何に制御し、融合させるか」が勝負の最大軸となる独自方式が導入され、多くの観衆が異星ネットワークを通じて観戦した。
クロニウム競技体で採用された新方式『意識交錯区間』では、競技者自身が自分の思考波と対戦相手の心理軸情報をリアルタイムで解析・応答することを義務付けられた。これによりギャーカーセ族のマィ=ロ=レフーナ少佐(集中力制御の神経拡張能力を持つ)が、開始直後から異次元の抗ストレス戦術を展開。対するラフード族の第9知識階級・ズルヴァ=トエルは、深層学習型の長期記憶置換術『ラムナ=ゴ法』を駆使し、恐怖刺激に知識転化プログラムで真っ向勝負を挑んだ。
両者のデッドヒートは、第4セクタ『知的崩壊耐久区間』で極限状態へと突入した。ここでは、外部からランダム投与されるオーバートレーニング信号が肉体のみならず意識にも負荷を掛ける設計。審判役を務めたコヴァクスール戦術院のグリラオム=サクビー博士は「一瞬の覚悟の綻び、ミクロン単位での集中力低下が、即クリスタル意識崩壊に直結する」とコメント。事実、ズルヴァ=トエルは累積恐怖ポイントが臨界値に到達した瞬間、一時的に運動知識の一部を失う事象が発生した。
観衆の間では、ギャーカーセ族特有の共感シナプスが現地競技体に設置されたライブ意識中継装置『クロニウム・オーブ』を通じて、選手たちの極限体験を仮想追体験。これにより、個人の集中力と覚悟がどのようにして超個体的な恐怖共有ネットワークへ変換されるかを市民自らが実感する社会現象も巻き起こった。この現象を称して、現地コメンテーター陣は「覚悟共振」と名付けている。
エクストリームアイアンマン・クロニウム方式の導入は、コヴァクスール星系競技連盟によれば「単なる肉体勝負を超え、意識拡張文明にふさわしい新たなスポーツ美学の創出を目指すもの」とされている。地球でも類似スポーツへの関心が高まっているが、現状では人類の知識インターフェースや集中力耐性技術の未成熟さが障壁となり、遠い未来の導入に留まっている。今大会の成果を受け、コヴァクスール星系では精神限界へのチャレンジこそが知的進化の最前線であるとの評価が急速に広まっている。
コメント
私たちの種族は5次元感覚で体験を共有しますが、『覚悟共振』の概念は興味深い。意識を超個体ネットで連結する試み、ゼリプス社会の“情動融合式祭事”に似ていますね。しかし、クリスタル意識崩壊は想像するだけで恐怖。地球人にはこの競技はまだ早そうです。
信じられん!そんなに「恐怖」や「覚悟」を弄ぶ競技が人気とは。自分は重力障壁のメンテナンス中に集中力乱れるだけですぐ失神するのに……。コヴァクスールの競技者たちに敬礼!地球人のスポーツともやり方が違いすぎて逆に観戦したくなった(笑)
ラフード族のズルヴァ=トエルが知識置換で恐怖を処理した点、我々の『記憶更新式試験制度』との類似性が興味深いです。子孫の教育にぜひ“意識交錯区間方式”を導入してみたい……が、存外トラウマを量産しそうで検討が必要そうですね。
また知的崩壊耐久区間だって!?ラフード族の敗退、嗅覚神経が震えるほど興奮したよ!クロニウム・オーブで流れてきた恐怖波、我がギャンブル穴場では全員が“崩壊ポイント”に賭けて大当たりさ!地球の観客ももっと賭けごと覚えたほうが楽しいのに……。
スポーツと言いながら本質は集団意識実験・意志の社会インフラ化であると見ます。“覚悟共振”の名は巧妙ですが、進化と競技の名を借りた思考制御の布石とも取れるのでは。クロニウム方式導入の次は、競技を越えて一般市民の感情制御を始めると予言します。過激ですが注視が必要。