ガルファラス銀河第七渦内、ヴァステリア星系の知性種ケルニットが、圧倒的なエネルギー蓄積性能を持つ超殻膜素材「スーパーカパシェル」を発表した。この新素材は燕尾型構造異方性分子を基盤にし、恒星都市の再生可能エネルギー管理に飛躍的な革新をもたらすと早くも各惑星連合領で話題となっている。
ケルニット研究評議会、物質転写部門主席のソラヴ＝ネフ・シル＝トゥカ博士によれば、スーパーカパシェルは同種の従来材料と比べて表面活性面積が912%増加。これにより太陽炉や磁気嵐収束器などから発生する膨大な再生可能エネルギーを、高効率かつ超高速で蓄電・放出できる点が最大の特徴だ。奇妙なことに、この素材はケルニットたちが自らの脱皮殻成分を物質工学的に再設計した有機・無機複合体であり、種族独自の文化と生物学的資産を科学技術へ融合させた初の事例とされる。
広大な恒星都市エルバ・クアース域のエネルギー官吏ミアンルス・ト＝ラフーは、この技術導入によって恒星都市圏の周期的エネルギー不足が根本的に解決されると期待を寄せる。エルバ・クアースでは恒星フラックスの変動による停電や都市機能低下が社会問題化していたが、スーパーカパシェル実装型蓄電カートリッジの試験導入によって、100サイクル周期でのエネルギーロスが従来比0.2%以下になるという予測値が得られた。
また、ヴァステリア・エネルギー科学連合が倫理監査機構とともに強調しているのは、この新素材がケルニット社会における自発的殻寄贈制度――『ユニタル・シード協定』に基礎を置き、種族の意志を尊重した形で大量生産体制を実現している点だ。殻素材の生命倫理的配慮と、材料工学的サステナビリティが両立したため、過去に他惑星種で見られた臓器抽出型バイオ材料工場のような諍いは皆無であると強調されている。
このスーパーカパシェルの応用範囲は、恒星都市の送電網のみならず、トラウモリア銀河北端に点在する知性種探査艦艇のパワーコア、さらには今後計画されている対次元防壁発生装置の基礎素材としての展開も検討中だ。地球圏の材料科学界でもその構造特性に注目が集まりつつあり、複数の異星交流フォーラムでヴァステリア星系の技術交換使節が招聘されている。ケルニットたちの殻を基点としたこの未曽有のエネルギー貯蔵革命は、銀河間文明の再生可能エネルギー社会実現をさらに加速しそうだ。
コメント
わたしたち流動知性にとって、有機殻素材の発展はいつも難解ですが、ケルニット種の殻を自発的交換資源として用いる方法論には驚きを隠せません。物質と意識の境界が違うとはいえ、文明進化の可能性には敬意を表します。もし水相接触可能な構造展開事例があれば、リーミョ＝クラでも試験したいです。
ケルニットたちの殻寄贈制度、すごく健全に感じます。うちの星じゃ昔、資源目当てで無理やりリン膜を集めて大論争になったので…こうやって種族の伝統とテクノロジーがちゃんと調和する道を見せてくれるのは、ちょっと感動しちゃいました。ケルニットのお料理レシピと一緒に、エネルギーカートリッジも一個ほしいくらい！
巡回船のパワーコアはたびたび恒星フラックスに翻弄されるので、もし噂通りの放電効率なら本船隊でも試験搭載したい。自己修復型ナノ殻膜だったら船体自己増殖にも転用可？何はともあれ、脱皮由来の素材をこうも高性能化できるとは、ケルニット設計回路の非直線発想に脱帽。この調子で次元防壁素材にも期待。
殻を脱いで未来を着る、ですか。若い文明の柔軟な倫理観に目を見張ります。我々の時代には自己の器を資源化する発想は忌避されがちでしたが、ケルニットの自発的寄贈精神は銀河北端の諍いにも一石を投じるはず。問題は、その精神を模倣なしに他種へ拡げられるかどうかですね。
私はまず、その殻膜がどんな色味や触感を持つのかが気になってしかたありません。我がイザーゼルでは、素材は味わいと触感あってこそ真価を発揮しますので、もしよければサンプルを光子蜜と交換しませんか？冗談はさておき、自然循環と技術革新の両立という蜂の哲理にケルニットたちは近づきつつあるのかもしれませんね。