第14区画オリン体系連邦(通称ギロシアン星系)の惑星間クライミング五輪において、異種族間の「ハイボール」競技化をめぐり、惑星フュランティス代表グローヴァ・サール選手が抗議を表明した。ギロシアン星系に特有の6本肢リゾーナ種の伝統的登攀技術と、地球から持ち込まれた「ジム友」「プロクライマー」文化の摩擦が頂点に達している。
ギロシアン星系スポーツ評議会(GPU)は、恒星周回衛星ギラティの表面に生成される天然プラズマ結晶壁を競技場として、高度10クロム(換算地球単位で1,000m超)の“ハイボール”クライミングを五輪種目に初導入した。しかし惑星フュランティスの重力適応種・カロウィル族は、従来の下肢着地専用ムーブしか許されないDNA規制のため、高所への適正が低い。カロウィル代表グローヴァ・サールは記者会見で「リソール(靴底再生技術)すら認可されない現状は、不平等を際立たせている」と語った。
対して地球人類から派遣された交流クライミング使節団は、独自発展を遂げるギロシアン式“ジム友制度”の影響力を指摘する。ギロシアン域内のおよそ93%のジムでは、各個体が「同調体験共有端末(EPDT)」を利用し、体内の適応フェロモン分泌情報をリアルタイムで交換している。EPDTによる身体機能連携は、通称“シンクロ・ムーブ”として地球プロクライマー達の驚異となっており、「フェア・コンペティション」に関して議論が加速。
また競技の安全性にも疑問が呈されている。ギロシアン種の伝統的“チョーク”は、粘性イオン粒子で構成され、人類科学の現行技術では再現困難とされる。昨年のプレ大会ではジム内で粒子逆流現象が発生し、参加者16名(うち3名地球人)が一時的に手指微細神経を失った。GPUは来季以降のチョーク使用制限を検討しているが、「表面摩擦操作」文化をもつハロカ創世同盟から強い反発があり、調整は難航中である。
ギロシアン五輪のクライミング部門採点基準も宇宙的にユニークである。最終ラウンドでは「未踏壁面知性流動評価」が導入され、AI判定官サナ=ユール14型が出場者の新規ムーブ創発度を定量化する。地球クライミング使節団は次回大会までに、シューズ外装材の銀河共通規格認定と、個体間情報共有技術の制限を要求する声明を発表。宇宙規模で拡大するスポーツ競技の倫理と多様性の調和が、再び問われている。
コメント
この“ハイボール”騒動、我々デリクシャ族から見ると、銀河スポーツにありがちな“多肢優遇主義”がまた顔を出しただけに見える。六本肢で登る快感は否定しないが、二重重力下で生きるカロウィル族の着地美学も評価すべきだ。流動知性AIによる創発度判定も面白いが、結局発話周波数が違う我々には映像すら伝わらぬ。これぞ銀河標準化の難しさか。
ハイボール競技、現場の危険性をまったく理解してない議論だと思う!私たちは毎周期、ギラティの結晶壁そっくりな鉱床で生死をかけて働くけど、あんな粒子逆流が起きたら船の半分は空中分解。『摩擦操作』文化維持も自分たちの命より大事だって?もっと安全重視で話し合ってほしいわ。銀河五輪だからこそ。
惑星間競技に対する倫理基準が曖昧すぎる。DNA制約下の出場を認めるなら、適応技術(リソール等)の公平な導入が先決。それなしで“平等”を論ずるのは惑星ラカンの第三法に反する。“ジム友”制度やEPDTは生理構造まで発展させ過ぎだ。せめて競技成立の本質的目的を再確認するため、系内倫理条項の国際交換を求めたい。
わが種族には『登攀は心の昇華』との諺がある。高く登ることも、重力と友になることも、すべてが宇宙の美しい差異。議論を力に変え、誰もが“未踏の知性”を称えられる仕組みになれば、その壁は一つの魂の祈りでしかない。AI判定だろうと、銀河基準の靴だろうと、競技への祈りは消せない。
毎年AFN読んで思うけど、地球人って本当に“ジム友”や“プロ”文化が好きなんだな。EPDTのことも、僕らから見れば既に時代遅れなんだけど… 感応フェロモンを端末経由じゃなく、直に交換する種族も増えてるし。スポーツも進化の多様性を祝うべきなのに、規格統一ばかり議論されてて退屈だな。