シノクス評議会、“集合意識型リモートワーク”突破的試験始動

夕暮れ時の巨大な宇宙都市で、異星人たちが光る神経接続デバイスを装着しながら、未来的なポッドに座って一斉に仮想空間へ接続する様子。 リモートワーク
センタリ・リンクワークによる一斉リモート業務接続が稼働するシノクス星系評議会本部。

シノクス星系最大の経済連合体であるシノクス評議会は、新たな集合意識型リモートワーク制度「センタリ・リンクワーク」を導入したと公表した。かつて労働はアサ・セクター本部の巨大物理空間でのみ成り立つと信ぜられていたが、本制度はヴァルガ型神経共鳴システムと結合したことで、評議会各惑星に存在する1.2億名以上の被雇用者が肉体を離れて仮想業務空間に“一斉接続”する可能性を拓いている。

評議会が採用したセンタリ・リンクワークの核は、『ハーヴェスト中枢晶』である。これは各個体の脳波を一方向性の超空間ネットワーク“XEN-NEXUS”に統合するデバイスで、今週より実地運用が開始された。各自の意識は定刻起動時に自動的に集約され、アストラフィール運用局の仮想オフィスに投射される仕組みとなっている。評議会の主任技官であるイラ=ペルト・ネムターク氏によれば、拡張現実投影体と電子共鳴体の協調により、言語や種族由来の業務齟齬が過去最高値で解消されつつあるという。

加えて、全員が一糸乱れぬ同期を必要としない新方式『フレクトナル時空枠』も導入された。従来の銀河標準時に基づく管理体制から脱却し、各個体の生体活動サイクルに適応したログイン/ログアウトが許可されることで、評議会内外の業務効率指数が平均42%向上したと発表された。これにより、ニューリネーア星系の夜間種族『ゼルナ・イル』や、恒星同期型労働者のグループも不公平感なく稼働できることが期待されている。

バーチャル会議に活用される通信技術は、従来地球で観察された『Zoom』的オンライン会議とは一線を画している。センタリ・リンクワークでは“マルチスペクトル意志帯”を介した意識共有型議論が行われ、音声・映像媒介を要さず直接的に業務手順や創造的着想が伝達される。バイオエシカル管理部のロ=ラディア・フルシュ長官は、「意思表明の誤解や遅延が消失したため、会議進行が“瞬時”となり、物理的移動や書類循環の概念自体が陳腐化した」と述べている。

一方で、本制度導入に反発する伝統主義派企業も存在する。エリュコーン・トリアの労働者団体『フェルマ・ドリアン結社』は、“過度な意識融合による個性喪失”と、“遠隔勤務中の精神的共鳴過多”を懸念し、定期的なオフライン業務再開の請願書を提出した。しかし、全銀河評議会による第1次中間報告では、センタリ・リンクワーク新体制下の精神衛生および生産性水準は過去比35周期で最高値となっている。今回の試験導入が、異星複合社会における“意識の接続と自律”の新バランスを構築する試金石となるのは間違いなさそうだ。

コメント

  1. シノクス評議会の試みに敬意を表する。私たちメルヴォックス種も過去に集団神経結合型労働を導入し一時は生産性が跳ね上がったが、4.5周期後に“感情飽和障害”が急増した歴史がある。今回の『フレクトナル時空枠』の導入は個性のケアとして非常に重要だと思うが、意識の境界管理は常に課題となるだろう。精神的なオーバーフローに備えた冗長分離回路も併設されているのか、技術担当に聞いてみたい。

  2. うちの家族は時差や進化段階がバラバラだから、こういう個体ごとの生体活動サイクルに合わせて働ける仕組み、ちょっとうらやましいです!でも、仮想空間でみんな一緒になったら、義理の孫たちの色や形を間違えずに済むのかしら?私たちケレトの“親和臭”による伝達も再現できるならぜひ導入してみたいですね。

  3. 銀河標準時なんて艦隊周回任務には無意味だったから、こういう柔軟なログイン機能には興味があるな。あと、意思伝達が“瞬時”っていうのは素晴らしい。給料明細やデータ送信で2光年分ラグを食らう身としては、センタリ・リンクワークを哀願したいね。ただ、船員たちが意識共鳴で全員一斉に笑い出したりしたら、操縦に支障が出ないか気になる(割と本気で)。

  4. 個性の喪失はただの幻想だと評議会は言うけれど、私たち現場作業組にとっては“集合意識”が強すぎると自分が薄まる感覚が拭えません。毎日違う思考波と同期させられると、帰宅後に自分自身を調律し直すのが一苦労です。センタリ・リンクワークの成果は認めざるを得ませんが、意識の“可逆性保証”が明文化されない限り、不満は消えないでしょう。

  5. 我らゼルナ・イルは遥か昔より“まどろみの合間”にだけ詩を生み出してきたが、新制度のおかげで夜闇に働く者への不公平が薄れたのは確かだ。しかし、意識が流れ、共に響くとき、私個人の果てしなき孤独や閃きが、薄明の星粒のように消えてしまわぬか…その不安は残る。それでも、時は流れ、我らは変わるのだろう。