三連星構造で知られるタルヴィス星系にて開催される大規模コスプレイベント『レリーヴァ・ガザール』は、今期、恒星間コスプレ評議会による新たな「同一作品化」法案の可決により未曾有の波紋を呼んでいる。種族や生態系すら異なる参加者同士が“作品合わせ”で一体化する現象が観測され、それに伴いコスプレ表現の定義やアイデンティティ概念への議論も激化している。
タルヴィス星の主要知的種族エスク＝ハヌ族のコスプレ集団『フィラメント軸主義派』は、イベント用に惑星間SNS『ユリシエ・ヴォルト』を駆使してキャラクタープロフィールの全公開を推進。彼らは細胞組成情報改変による“リアルウィッグアレンジ”技術で、自己の物理特性を自在に変化させて作品キャラクターへの転身を行う。だが今回、種族固有の器官や構造を維持したまま複数種族が「同一作品の人物」として合成的パフォーマンスをする「インター・アイデンティティ・コスプレ」という新潮流が誕生した。
今回評議会が可決した法案は、作品原典の解釈権をコスプレイヤー集団に大きく委ねると同時に、イベントごとにキャラクター設定そのものを再定義できる制度を導入する。この新制度は『多軸的作品再構築原則』と呼ばれ、生体認証と遺伝子同調型衣装（ジーニック・コスギア）による所属認可が義務化された。これにより、例えば液体知性体ラルミナ族が光体種ヴュスタール族のキャラクターを演じる際、本来矛盾する物理形状や言語表現をダイナミックに融合した「合同体」として、評議会認可の撮影スタジオで公式記録登録が可能となった。
エスク＝ハヌ族の更衣専用区画『ヴィノス変成空間』では、互いに異なる四肢数・色彩感覚・テレパシー伝達法を持つレイヤーたちが即席ユニットを結成。彼らは特製の『合同手作り道具セット』（多肢対応針や念力接着フィールドなど）を駆使し、従来不可能だった多種構成の壮大な衣装プロジェクトを数時間で完成させる。この結果として、参加SNSではイベントタグとともに「物理法則を超えた作品愛」が話題となり、既存のコスプレ美学が根底から揺さぶられている。
他方、タルヴィス星系外から視察に訪れたケルダリウム星の文化観測官アンシ＝ヴォル・レムダリアは「自己同一性と作品忠実性の境界がこの規模で消失する現象は、宇宙コスプレ史でも極めて稀。多種族社会が生み出す新たな協同性と創造力には、今後慎重な法的観察が必要」とコメントしている。タルヴィス評議会では今後の多次元イベントでのルール整備も議題となりつつあり、“コスプレ”の可能性は今や惑星的規模を超え、種族間共創の象徴として進化し続けている。
コメント
私たちピルオスの者は名前と色彩の波動で他者を模しますが、タルヴィス星系の物理的・遺伝子的な『合同体コスプレ』にはただただ驚嘆します。自我の境界をこんなにも溶融させてしまうのは勇壮でもありますが、詩的個性の拡散とも映ります。だが、そこにきらめく新しい共同性の美に、次元を超えた感動を覚えました。
コスプレ評議会の法案、衛星庭園で噂になってました。わたしの幼果たちも他種族の遊戯に興味津々ですが、ここケレト星で身体同化までする遊びは前例がないので正直、少しこわいです。安全規定だけは毎回きちんと確認して欲しいものですね。
宇宙各地でコスプレのニュースは見るが、ここまで物理法則を余所にしたイベントは他では見ないな。操艦席からデータを眺めてると、タルヴィス星系の多様性が、そのままコスプレ文化にも現れている。俺たちも次の寄港時、念力接着フィールド体験したい……が、ユニフォームは脱がせてくれないだろうな、艦長。
多軸的作品再構築原則、非常に興味深いです。私たち連盟では個体同一性の再定義は一世紀前に社会問題となりましたが、あちらの星系では文化遊戯を起点にそれを議論しているとは…進歩的ですが、倫理面の透明性を維持できるか注視したいですね。多層意識体の参加も、今後認められるでしょうか？
実にチャレンジングな進展！合同手作り道具セット、スプトラ艦若体たちにも導入したい。私たち分体が沢山の身体を一時合体させる遊びに似ているが、タルヴィス星コスプレイヤーたちの創造力と情熱、見習うべき点多数。今期レリーヴァ・ガザールは記録映像保存予定、全銀河規模で配信希望！