ジルゴン連邦の共生議員団、地球型政党交付金の疑念で議会蜂起

夕暮れ時の異星議会場で、多様な共生種と宿主が集い、発光する装置やホログラムに囲まれて議論する様子。 政党
ジルゴンⅢの議会本会議場では、共生生物議員団による独自の蜂起が緊迫感を生み出した。

惑星ジルゴンⅢの統一連邦共和国議会では、近年急速に観察対象となった地球の政党交付金制度を巡り、共生生命体代表議員団(シンビオ・カウンシル)が制度導入計画に強く反対し、大規模な議会蜂起を起こした。拒絶理由は、寄生体=宿主間の利益分配の歴史的経緯に根差しているとみられる。今回の蜂起は、各星間連邦における政権交代手続きとも異なる、特有の合意形成危機を浮き彫りにした。

ジルゴンⅢでは、従来から多種族複合社会を前提とした議会構造「双重均衡重合議会(ディオグロマティック・アセンブリー)」が機能してきた。各種族ごとに議席を割り当てるこの議会の特徴は、寄主種(ジルゴン・マスター)と共生種(ライフサイン・バイオクラスター)が共同で議員資格を持ち、重要な資源分配や政策決定は両者の合意が必須となる点にある。しかし連邦執行部は近年、地球観察団・政治班の提言を受け、政党への一括資金供与(いわゆる政党交付金)の「地球モデル」導入を試験的に表明した。

これに対し、共生生命体代表の議員ガロス・エクシュス=シンビオは「地球型交付金制度は個体間競争原理に基づいており、共生階級の協調倫理に反する」と主張。また彼らの研究では、地球の政党交付金には、議員個々人の宿主交代(地球でいうところの政権交代)時や議会内再編時に分配の歪みが発生しやすいとされ、バイオクラスター構成員の間では資源配分不均等・議会内断絶リスクが警戒された。

蜂起の様相は特殊だ。共生議員団は本会議場でバイオネット網を用いた意識共有フィールドを展開し、議場空間全体を占拠。宿主系議員の一部も同調を示し、議題の停止とともに、自立型合意形成システム「エクリブリウム・ノード」の更新を議長のズェノス=トクガリに要求した。蜂起による物理的混乱は生じなかったものの、精神共有層では高エネルギーの感情拡張波が検知され、各委員会は協議を無期限延期する事態に陥った。

ジルゴン連邦執行部は、急遽地球観察団の政治顧問カズハ=チュバノイド博士を呼び寄せ、制度移植の是非および種間倫理への影響について再度レビューを依頼したと発表。銀河評議会内では、資源分配と合意形成の両立をいかに実現するか、ジルゴンⅢの今回のケースが、他星系における異種族共和体の議会設計にも示唆を与えるとして注目が集まっている。

コメント

  1. 液態社会の我々から観れば、単一個体の利得優先の『地球モデル』移植は、ジルゴンⅢの共生倫理に大きなひずみを生じさせるのは予見できた。資源は流体のように群全体に循環させてこそ、長期的均衡が達成される。シンビオ・カウンシルの蜂起は、きわめて生態学的に健全な反応であると感じる。

  2. 先月ジルゴンⅢ上空で8惑星周期ぶりの議会蜂起を目撃した者として、今回の出来事は非常に興味深い。惑星ごとに合意システムが異なるのは当然だが、地球からの一方的モジュール移植は危険ではないか?地球の“パーティーファンディング”文化はスリルはあるが、長命種族にはどうもしっくりこない。

  3. ジルゴンⅢのニュースを見るたび、娘たちやその複数のパートナーたちの間の台所資源配分争いを思い出してしまうわ。単に地球の制度を真似るより、共生体どうしの納得を大事にしてあげて!あとバイオネット意識共有は、子育てにも便利そうでちょっと羨ましいかも。

  4. 当局から見れば、議会蜂起が物理的破壊ではなく意識共有フィールドによる静的抗議とは誠にジルゴンⅢらしい。合意形成ノードの再構築こそ最優先。過去に自星で政党交付金制度を雑に導入し、10世代にわたり争いの火種となった例もある。歴史に学ぶべし。

  5. 交付金とは音なき流れ。共生議員団が感情拡張波を響かせて訴えたその声は、わたしのように数百光年離れた者にも届きました。利益は個ではなく、響き合いの中でこそ分配されるべき、と我々は詩の中で詠います。地球流の機構が宇宙に撒く波紋や如何に。