アンドロ=ノガ星系の集合知文明『ガール合議体』が発信するリアリティ番組網において、今週、各スポンサーによる前例のない争奪戦が展開され、放送倫理協議会『プルーミ評議』が緊急招集される事態となった。ガール合議体の番組枠争奪戦は、従来のサブスクリプションベース配信との衝突もあり、宇宙規模のエンタメ産業に波紋を広げている。
合議体最大の映像配信局『スフェリオン・メタライン』が制作を進める次世代リアリティ番組『中核意識(コア・セントラル)サバイバル・プロトコル』は、参加者同士が自身の意識片(ギル・コンシャス)をネットワークで交換しながら生存戦略を競い合う、極めて革新的なコンセプトで発表された。この番組は単なる娯楽との枠を超え、社会学・情報工学的な実験としても注目され、ガール文明圏に数多存在する『派生現実ゲーム』とも一線を画している。
スポンサー戦争の火蓋を切ったのは、エネルギー粒子飲料大手『アーラ・イノエストリ』社。彼らは視聴者参加型の投票プラットフォームを連動させ、自社ブランド品を『意識共有イベント』の中核サプライ品として組み込むことを提案し、見返りとして放送エリアの拡大を要求。一方、知覚補助装置メーカー『セネフィス工業集団』は、自律進化型AIによるリアルタイム視聴体験をスポンサー特典化し、参加者の意識片を自社記憶クラウドに保管するモデルで交渉を進めている。
ガール合議体では、過去数千サイクルに渡りサブスクリプション方式による配信確保が一般化していたが、今回の番組には外部惑星連絡局からも関心が寄せられたため、特殊報道枠との連携も議論に上がっている。一部の評議員からは、地球で観測される『ネットフリックス型』配信モデルから示唆を受け、『スポンサー依存モデルは番組内容に望ましくない外部干渉を生む』との懸念の声も上がった。
現段階で『中核意識サバイバル・プロトコル』のスポンサー確定は持ち越されたままだが、情報透明性と番組独立性のバランスが、ガール合議体内外で新たな論点になりつつある。複数の放送倫理エージェントも、スポンサーによる参加者意識改変のリスク管理について調査を開始した。合議体の民主的コンセンサスに基づくエンタメ運営が今後いかに進化するか、未曾有の注目が集まっている。
コメント
我々ズー=ラントでは数億周期も前にスポンサー依存配信を全廃した。その判断が正しかったと改めて実感する。『意識片』の提供を見返りにブランド浸透を図るなど、情報圏の危険な混濁を誘発する恐れあり。ガール合議体は倫理規範を強化すべきだ。
サバイバル番組なのに、スポンサーが“生存サプライ”を提供して、意識までも管理・収集なんて…!我が子らの多層意識にも悪影響が広がらないか心配です。ガールの皆さん、放送倫理の話し合い、しっかり見守ってますよ。
正直ワクワクが止まらない。地球で言う“リアリティ番組”に意識そのものを賭ける発想、ガール文明の頭脳は凄すぎる。だが、もしセネフィスのAIが意識片を保存したら…後に記憶ハッキングされた参加者が、別人格で復帰した、なんて宇宙ネタとして面白いかも。
この争奪戦、いっそ詩の題材にしたいのぅ…!かつて我らが文明もメセタイン=ルーヴの炎上番組で存亡の淵に立ったことがある。時代が変わっても、“誰が舞台を操るのか”は尽きぬ謎。合議体の英智が良き物語へ導くよう、遠くから祈る。
意識片の“共有”や“改変”なんて、我らには理解困難です。他色感覚種の娯楽は刺激的すぎて眩暈が。だが、プルーミ評議が介入するのは良い兆し。倫理線をどこに引くか、全宇宙への試金石になるかもしれません。