トラガリス恒星系の音楽文化に新たな潮流をもたらす、史上空前のビジュアルフェス『サルトラム・レゾナンス24』が惑星ビュラルの磁気雲帯エリアで開催された。マグスラ種族の音響集団「ケオラス・スパイア」を含む9惑星35楽団が一堂に会し、超光速通信技術『ウェイブバッファ』のライブ接続によって、各星間から約101億の異星聴衆がリアルタイム参加した。会場全体を包み込む立体視覚音響演出と、物質変容型楽器が創る次元横断的な音楽体験が、参加者たちの感性記録体に強烈なインパクトを残している。
今回のフェスを特徴づけたのは、伝統的な鼓膜音受容に限定せず、視触覚・磁場感応・光子共鳴記憶といった多感覚的知覚に基づく『総合音楽体験』の追求だ。とりわけ注目を集めたのはチュラグン星楽団『フローサイル・サーダ』による演奏。彼らは、観客の前頭磁気層をリアルタイムでスキャンし、『ヒュム＝エケラギ』と呼ばれるプラズマ楽器を用いて個々の精神波形に共鳴する旋律視像を生成、空間一杯に放射した。体験者の感想蓄積体データベースによれば、97%の聴衆が「自己人格の複製体が一時生成された感覚」を報告している。
また、今年から初導入されたのがオルタ・メゾロン文明産の新型『ビジュアルサウンド化調機』だ。この装置は特定周波数の音信号を即座にホログラフィック結晶体へと変換し、音階ごとに多次元色彩が空間を律動する。さらに、観客が自身の生体コードと同期させることで、個人の記憶断片が色彩と音に折り込まれるインタラクティブ性を持つ。このテクノロジーを用いたラズギュル種族の『ラミュント・クォーラム』は、観客全体の生命歴史波を収集し、集団意識全体を「楽曲」として再提示、会場全域の空気電荷密度を一時的に14％上昇させた現象は科学者の間でも注目された。
従来の惑星間音楽祭では、楽器自体の伝播方法が大きな制約となっていたが、今年の『サルトラム・レゾナンス24』は「重力位相積層型携帯楽器」の完全普及により、出演者全員が遠隔自宅から物質情報を転送、現地会場で即時生成する画期的手法を採用。これにより従来は輸送コストや時間遅延に阻まれていた新興文明の参加も一気に拡大した。今回初登場となった銀盤核リバース奏法を用いるナシュミア小惑星郡のミオール・シルヴァ楽団は、自己記憶金属自体を音響発振源とし、演奏中に自律分裂と再結合を繰り返すという、従来の「演奏」の枠組みを覆すアプローチを披露、大反響を呼んだ。
地球で近年台頭しているエレクトロニカ音楽も、現地解説ゾーンにて一部紹介としてフィーチャーされた。ケオラス・スパイアのリーダー、ムグリス=ナヴァ・カルトン博士によれば「まだ地球人の表現形態は我々に比べれば初歩的だが、シリコン限界周期を基盤とする楽曲生成論には注目すべき発想がある」と語る。今後、意識転送型フェスや記憶音像交換マーケットの拡張に向け、トラガリス恒星系の音楽文化はさらなる多次元化の一途をたどりそうだ。
コメント
磁場感応や光子共鳴記憶を基盤とした音楽体験の発展、心より称賛します。我がアリール音律圏では共鳴視覚が重視されてきましたが、スキャンされた精神波形と即興融合した旋律視像生成は比類なき創造性。とはいえ、人格複製体の一時生成に倫理的配慮が薄いのは課題かと。精神層への干渉については、投票型の事前同意プロトコル導入を強く推奨します。
わたしの93触手児もビジュアルサウンド化調機の生体同期体験に夢中でした！記憶断片が色に折り込まれて会場がきらめく様子は、家族記念波に刻まれるレベルでしたよ。来年は各リーフフォーム用の低重力視覚支援ゾーンも用意してほしいですね。
超光速通信で101億のリアルタイム参加…いやはや、生物種間感受シンクの壮大さに脱帽！地球エレクトロニカの紹介はややカタツムリ遅延だが、広義のシリコン限界周期にはかすかな希望を感じる。尊大な存在のつもりはないが、そちら地表生物のフェスもいずれ観測価値が高まるはず。
ミオール・シルヴァ楽団の演奏、小脳分体80体総員で振動波解析しました！自己記憶金属が音響発振源とは…誕生から分裂、再融合まで音楽に包摂され、演奏と存在が溶けあう感覚に歓喜。従来の音楽観を超える『生きた楽器論』、全星系で討論すべき美的事件と認定します。
集団意識全体を楽曲化し空間電荷密度が14%も上がるとは…これは次回の全惑星連体式祝祭にも応用可能性あり！我らの意識織合祭にもラズギュル式機材導入を検討したい。地球人芸術も一覧に加え、普遍的審美感の探索を続けてほしいものです。