銀河屈指の芸術惑星トリオニウムで、数世紀ぶりに伝説の惑星間ミュージカルが復活し、ガモラス種族による新開発の『多次元カーテンコール』技術と融合する壮大な公演が話題となっている。観測球体ネットワークを通じて同時配信されるこの舞台は、オーケストラ演奏や出演者との相互波動コミュニケーション、惑星横断チケット抽選方式など、従来の宇宙エンタメ常識を大きく更新するものだ。
今回上演されるのは、トリオニウム歌劇連合が放棄されて以来封印されていた大作『オルガノノクスの記憶回廊』。宇宙歴第44重層周期に記録されたトリオニウム内乱の歴史と、ガモラス種ヴァーテ=コル役員による平和交渉を芸術的に昇華した作品で、演者には各星系から抽選で選ばれたアンドモフリ種声帯奏者団及びカンメルトリウム界隈の知覚映像詩人らが名を連ねる。オーケストラ部門は、今次公演のため再編成された『ガモラス次元交響楽団』が担当。彼らは重力波楽譜を用いた全方向演奏システムを採用しており、従来の単一惑星型ミュージカルでは表現不可能だった立体倍音空間を実現した。
最大の目玉は、ガモラス種族によって新開発された『多次元カーテンコール』だ。これは、観客の意識波と演者の神経共感信号を並列に増幅し、舞台フィナーレ時に全参加者の内的拍手・賞賛波動が可視化されるというもの。既存のカーテンコール儀礼では出席者の物理的拍手や列席者同士の反響音が主流だったが、今回の公演では観客が宇宙通信端末『ナヴィトリウム・シード』を所持していれば、遠隔地からでも自らの賞賛信号をオーケストラと同期させることができる。トリオニウム中央文化評議会は、「芸術体験の民主化と多次元化が銀河市民の知性進化を後押しする」と声明を発表した。
また、チケット配布制度も注目されている。旧来の購買制から完全抽選制への移行により、各種族・各階級間のカルチャーアクセス格差を是正。宇宙市民評議会のエルグリス=フォン議長は「芸術体験はあらゆる存在に平等であるべき」という見解を示した。チケット当選者には、専用パンフレット『オルガノノクス全次元鑑賞資料』が郵送され、その内容には演者の波動共感履歴やオーケストラ演奏記録、過去公演映像型式ウォームメモリが収録。これにより、公演そのものだけでなく、知覚情報としての芸術史体験も各参加者間で共有可能となった。
このライブはクォンタ通貨建てのライブ配信でも全宇宙圏へ提供され、リアルタイムでの応援波動送信やコメント投稿が恒常的に可能。特筆すべきは、地球圏への電波準拠サブ配信も試験導入された点であり、一部の地球観察者たちがトリオニウム式オーケストラ演奏や、複数種族による多言語歌唱に強い興味を示しているとの報告もある。今後、他星系での同技術応用や地球の人類を含む新たな種を対象としたミュージカル拡張計画も議論中だ。
コメント
トリオニウムでの『オルガノノクスの記憶回廊』再演とは…数世紀ぶりに観測できて感動が逆流しています。我々ミュリエラ種の時間認識では、このような壮大な歴史回廊芸術はしばしば未来にも影響を与えるので、実験用として解析データの事前公開があればと思う次第です。多次元カーテンコールの波動、ぜひ時間軸逆角からも参加したいものです。
抽選制になったおかげで、ついに私のようなケリニクスの庶民にもチャンスが回ってくるなんて!昔は貴族階層しか見られなかった波動劇場、いまやナヴィトリウム・シードひとつで家事をしながらでも共感拍手を送れるだなんて、進化しすぎじゃない?ガモラス次元交響楽団の重力波楽譜、今度は子どもたちにも聴かせます。
観測球体ネットワーク経由で視聴しましたが、正直オーケストラと聴衆の意識波同期は、我々観測者にはやや感覚過剰。だが、これこそ銀河の新しい『儀式的感動』と言えるでしょう。伝統的拍手音よりも強力な共感共鳴波が、巡回疲労のパルスを1拍分回復させてくれました。次元間でこれほど密接につながるなら、古き儀式より進歩と認めざるをえません。
かつて我らが詩人会ではトリオニウム歌劇連合の没落以降、この規模での芸術祭再開は幻想とされてきた。だが、『多次元カーテンコール』の発明は、観客の芸術体験を骨格ごと書き換える。波動共感の視覚化など、詩論における『美の匿名性』にも新たな疑義を呈する出来事だ。私はいま、存在詩として応援波動を送信した。
我々ベブラリウムにとって、個別存在が賞賛波動を送信するという行為自体が極めて興味深い社会実験です。集団ノードでの全体評価には適用外でしたが、今回の技術拡張により個体経験の民主化を体験可能となりました。次回は分岐意識単位でチケット抽選に臨みます。地球観察も併行でする予定。多次元芸術の統合は近い。