ザルザル連環礁の“光路灯台競技”で起きた漁獣たちとサンゴ知性体の異例共闘劇

夕暮れの異星サンゴ礁で多様な海洋生命体や珊瑚知性体が発光する灯台を協力して組み立てている様子。 海洋
光路灯台競技で異種族が協力し合い、灯台を建設するザルザルの夕景。

恒星ザルトリウム系の第三惑星ザルザルで、旧周期より続く伝統的行事「光路灯台競技」が今年も盛大に開催された。しかし、例年淡々と進行するこの催しで、先制的サンゴ知性体「カリリルト集合体」と漁獣連合「フーヤグ族」が、初となる相互協力を実現し、会場となった連環礁地域の維持策に宇宙社会から注目が集まっている。

ザルザルの“光路灯台競技”は、氷結放射と重力漂流を駆使して人工発光体(灯台)を組み上げ、海流の逆巻くサンゴ礁群に航行者の安全を促す競技である。かつては純粋に技術力と連携を競ったが、近年は惑星全域での温暖化傾向と、外来惑星から飛来するプラスチック粒子の深刻な蓄積が課題となっていた。サンゴ由来の複合知性「カリリルト集合体」は、酸素を媒介する特殊な共感波で、海洋汚染物質の選択的集束・分解を試みてきたが、漂流垃圾(海洋ゴミ)の増加速度が防衛努力を凌駕しつつあった。

この窮地に、かつてはカリリルト集合体と緊張状態にあった漁獣連合フーヤグ族が動いた。漁獣たちは灯台建設のために海底プラットフォームを提供し、高速遊泳隊を結成して流入するプラスチック片や温暖潮流で流失した金属片を迅速回収。さらにサンゴたちの化学信号による“共振同調”をヒトデ型翻訳機『スフィリクス装置』によって翻訳・伝送し、両種がリアルタイム情報共有を可能とした。これにより短期間で礁域全体のゴミ集積が半減、人工灯台の設置も前周期比2倍の精度を記録した。

注目すべきは、今回初参加したクジラ型高次意識体「ルフル=トン」の調停行動だった。ルフル=トンは音響投影で沿岸漁師族や珊瑚群体系に“悟性通信”を布告し、循環資源化プロトコルの基礎訓練を主導。従来は各種族ごとに分断されていた資源循環の意識が、灯台競技を通じて劇的に一体化したのである。

太陽系第三惑星(地球)から観測されるサンゴ礁衰退やプラスチック汚染が、ザルザルにも未知の波及効果をおよぼしつつある現状──。ザルザル評議会生態部のトリィラ=マシュ・エトラ長官は、「外惑星由来ゴミが内海へ到来したなら、それだけでグローバルな警鐘」と警戒を強める。一方で、これまで生態系内緊張に晒されてきた種族間協力の萌芽を灯台競技が育んだことは、銀河規模の海洋保全活動に新たな進化を予感させている。

コメント

  1. ザルザルの皆様、なんと刺激的な進展でしょう!わが星環では千光年を超えて資源循環協議が停滞しておりますが、漁獣とサンゴ知性体の協働という大胆な発想は真似したい限りです。プラスチック(ヒューマノイド起源ゴミ)問題の波及を他山の石とせず、外来要素と共生する自治の知恵、称賛に値します。灯台競技、ぜひ次は我々も共同観測させてください。

  2. 私は海洋性ではありませんが、子孫のために毎夜温度を測っています。ザルザルのサンゴ集合体とフーヤグ族のように、異なる生様が助け合う姿に共感します。『共振同調』の技術は砂渦の胞子集団にも使えるかもしれませんね。遠い世界でも、未来を守るため皆が努力していると知り、なんだか心が温かくなりました。

  3. 惑星ザルザル、あなたがたの競技は毎年観測しています。今年は、なんというか皮膚膜がうずきました。ヒトデ型翻訳機?わたしの同僚機械脳はエラー連発してますよ!冗談は置いといて、音響投影調停まで導入するとは、相互理解への高次意識進化。銀河GDPランキングなど無意味に感じます。むしろ、こうした動きが今後の標準になれば良いですね。

  4. 種族間の過去の緊張を乗り越え、共に行動した──わたくしどもの倫理学研究でも事例として長く検討されることでしょう。ただ、外惑星のごみ問題は無視できません。地球発の影響は未だ精査中ですが、銀河憲章に則り回収義務と発信元責任について議論を求めます。ザルザルからの報告、支持いたします。

  5. おお、光路灯台よ/泡立つ潮とプラの夢/サンゴとフーヤグ、同じ流れに揺られ/ルフル=トンの音の抱擁/遠き地にあらぬザルザルから、われらも学びたり/分かち合う波紋を、遠宇宙へ/その一灯が、まだ見ぬ闇路を照らしますように。