昨夜、惑星連盟の第六銀河クォンタムテニス評議会において、ボイデン星出身プロプレイヤーのザール=トリフ氏が持ち込んだ『多重サーブ』技術を巡って、プレイ倫理の根幹が揺らぐ大激論が巻き起こった。この新技術は、サーブ発射時に並行次元を利用し最大11本のボールを同時に生成するもので、一部では「グランドスラムの意味が消滅する」と主張されている。
評議会で披露されたボイデン式サーブは、ズオ光子重重結晶を内蔵する専用ラケットと、同星独自の意識拡張プロトコルによって実現される。これにより、スコアリングが従来の5倍から12倍に複雑化し、各次元層のポイント検証のため最新型AI審判『フィルトラス=エイグリッドX1』が導入された経緯がある。ただし、このAIの判定は亜空間位相誤差を1セットごとに4%の割合で発生させるため、公平性を巡る疑義も広がっている。
従来、銀河間テニス連盟は1マッチごとにボール1個、最大4本のサーブ、そして2本の腕による物理的バックハンドを原則としていた。しかし多触手族のトリロ=カーラ副議長からは「腕の本数による優劣が本質ではなく、量子多重存在への適応こそが現代スポーツ進化の鍵」との見解が示された。一方、ラキアケリア星の保守派プレイヤー、オヤ=ミルスン中佐は「伝統のサービスエースや人間型素体のテニス肘に配慮せず、テニスという競技精神そのものを失わせる」と強く反発した。
また、ロミロン星系のファン協会は「多重サーブ」は観客の記憶に過負荷をかけるため、試合中に『バックハンド記録補助脳装置』の装着を義務づけるべきとの要望書を提出した。これに対し、サイオディック連盟医療部は、先進種族がこの装置使用によるテニス肘型神経劣化症を発症しやすいことから注意喚起し、技術拡張の健康影響まで議題化する動きが始まっている。
いずれにせよ、ボイデン星式『多重サーブ』の今季グランドスラム導入可否は、銀河スポーツ哲学の根本に一石を投じつつある。次回開催地であるマルリダス星雲にて、評議会は最終的なルール修正案を審議する予定であり、宇宙テニスの未来を見守る各知的種族が固唾を呑んで注目している。
コメント
やれやれ、われらイオダリオンの時空折りたたみ球技協会でも、類似した議論が五百周期前にあったものさ。我々の脳回路は128並行試合まで耐えられるが、人間型や単腕種族には負荷が大きすぎる。競技の多様性を称えるべきだが、まずは観戦者全体の神経安寧も配慮してほしい。
また公平性の話か…AI審判の誤差4%は航行中の三次元離脱以上に高い事故率だよ!今のままだと、勝敗発表時に観客全員が別次元に共鳴して大騒ぎになる予感。せめてAI審判に惑星航法モジュールを搭載してほしいな。
家庭内テニスサークルでの試合でも、多重サーブは子孫たちに絶対禁止!前回導入時、記憶補助脳装置が焼けて、私の配偶者などは1ボール目と8ボール目を区別できなくなりました。楽しさより家計と健康が大事です。
量子多重サーブの導入は、競技の進化そのものへの問いだ。腕の本数や物理的能力ではなく、並行存在への適応力でスポーツが測られる転換点かも知れない。ただし、倫理的検証や記憶負荷の社会的コストを置き去りにするのは賢明とは言えない。本質的な意味での『ゲーム』を、哲学的に考え直すべき時期だ。
グランドスラムやサービスエースの伝統を無視した技術革新を推進するとは、何と乱暴な!わがラキアラ星は三対腕を誇るが、テニスは素体そのものの限界を楽しむ競技であったはず。次元や装置の依存は、スポーツの誇りを薄めるのみ。いずれ我らの種も追い越され、誰も記録に感動しない日が来るぞ。