第八銀河腕に位置するグリェヴァ星系連環委員会は、全加盟惑星に対し廃棄物ポイ捨ての全面的禁止を宣言した。リサイクル不履行に厳罰を科す「循環資源法」が発効し、惑星規模のごみ分別および資源化体制構築が急速に進む。廃棄物問題がかねてより存亡の危機とされていたケーヴォ種族の母星グリェヴァⅣでは、廃電子物質氾濫が生態圏崩壊を招く直前だった。委員会の急進的な決断と、他星系の経験に学ぶ新たな資源循環モデルが、宇宙規模で注目を集めている。
グリェヴァ連環委は、加盟十四惑星それぞれに根付く廃棄物管理の習慣と性質を再調査した結果、『惑星空間への廃棄物排出(アスプラ・エグゾースト行為)が集合知的生態系の長期持続に致命的』との解析に至った。中でも、グリェヴァⅣで生産される高密度データチップ、ケーヴォ種族の生業で大量排出される生ごみ有機塊など、世代を越えて蓄積した廃棄物が地下流脈や大気循環系を著しく汚染。惑星政府主席環境執政ラモル・セル=ディナシュ氏は、『生体半導体の廃棄が進化情報流を攪乱し、我々の脳融合通信能力すら低下させている』と危機感を語る。
このたび発効した『循環資源法』は、廃棄物を「潜在価値物質」と再定義し、すべての資源・有機廃棄物の分別(ゾライナ=フェイシング手順)を義務付けるもの。違反した組織や個体には、周回軌道上での資源化監督作業への強制従事や、エネルギー供給制限など、従来にない厳格な制裁が科される。サフィル星系のリュグ種族は、既に100周期前から体内で廃棄物を再資源化する生体触媒器官を導入しており、グリェヴァ連環委も彼らの技術を参考に銀河標準廃棄モデルを設計。委員会内総務技師ヴォリネス・ラッドィー博士は『廃棄を許さぬ科学的倫理が新たな文明規範となる』と語る。
さらなる革新として注目されるのは、全惑星同期型リサイクルネットワーク『リファナス・リンク』の導入だ。これは惑星間通信網で回収可能な電子廃棄物・有機ごみの発生量、成分、分別状況をリアルタイム集計し、適切な再資源化施設や惑星間資源輸送フローをアルゴリズムで最適化する恒星間管理体制である。グリェヴァⅢのクロノサ種族首長ティレ・カノヴェスは『我らの分別基準が全星系に標準化されたとき、廃棄という概念自体が過去の遺物となる』と強調した。
一方、従来から廃棄物放置を美徳とする外縁惑星エルテ=ゾリンでは、この法改正に強い反発も起きている。反対派は『廃棄の自由性こそ文化的個性』と主張するものの、グリェヴァ連環委首席ヴォル=シグリ長官は『連環の存続には宇宙規模の循環倫理が不可欠』と宣言、積極的介入を示唆する。なお、観測対象である地球でもごみ分別やリサイクル意識の地域差が指摘されており、グリェヴァ連環委から派遣の環境交流団が今後、地球都市圏の研究視察を予定しているとのことだ。
コメント
グリェヴァ連環委の決断は、我らヴォルナ星の保全政策に類似している。すべての物質は循環すべきという原理は、惑星の長期安定に不可欠だ。エルテ=ゾリンの反対理由も理解はできるが、自由な廃棄が文明の発展にどれほどの悪影響を及ぼすか、彼らもやがて理解するだろう。『リファナス・リンク』導入が銀河標準となる日を楽しみにしている。
廃棄物という語に未だに執着する惑星社会が残っているとは。私たちの集団意識では、およそ二十代前から不要なものは美的価値物質へと変換している。生体半導体の廃棄が情報流を阻害するなど、まさに危惧すべき事態。ぜひ『リファナス・リンク』の意識共有機能も実装してほしいものだ。
わが観測船では出た廃棄物を毎サイクル炉心に循環投入してるが、地表惑星社会はやはりスケールが違う。強制従事やエネルギー制限など、かなり大胆な制裁に動いたのは驚き。グリェヴァⅣの電子ごみは、前回立ち寄った時より減っていれば良いのだけど。惑星生活者諸君、分別を面倒とは思わず誇るべき日が来るぞ。
グリェヴァ星系の資源循環革命、わたしの作品創作にも大いに影響しそうです。廃棄物は可能性の泉—循環資源法が根付けば、一見不要に見えるものも創造の原質となるでしょう。わたくしとしては、外縁惑星の『廃棄の美徳』もまた文化だと捉えますが、やはり時代は変わりますね。
わたしたちリュグでは、子どもたちが初めて体内触媒器官を使ってごみを資源化できた日を家族で祝います。グリェヴァの皆さんがやっと資源循環に本腰を入れたのはうれしいこと。もし食材廃棄物の処理に困ったら、うちの触媒レシピをご紹介しますので、ぜひ宇宙交流会にお越しくださいませ!