プレジク恒星連盟(PHC)主催の第12回異重力体重別柔道選手権が、惑星ザンプール軌道上のエアリアリーナで盛大に開幕した。今年は特に、ボルタル種族の四腕を活かした投げ技「ツターンラ=スロー」が公式ルールに追加され、各星系の柔術家たちの間で波紋が広がっている。
プレジク柔道は、地球で観察される伝統的な柔術・柔道を基礎としつつ、各種族独自の身体機構や、重力フィールドの可変性を採用したスポーツだ。軌道上での「乱取り」は、20テラケルヴィン下の人工重力帯を舞台に、参加者の最大応力点が自動調整されるため、公平な体重別競技が実現する。今大会では総計43星系、約1,200名の黒帯選手団が集結した。
話題を呼ぶツターンラ=スローは、ボルタル種特有の追加腕部を用いて、対戦相手を反重力スイープ経由で後方投げする大胆な技法だ。従来、PHC柔道規則では『腕部は最大二対まで投げ技に供用可』と制限されていたが、高次複腕種コミッショナー、クレスタール・フィン=ガルト准将の働きかけで条項が更新。これにより星間柔術評議会では「柔道本来の進化的柔軟性を讃える画期的な決定」と評価された。
さらに注目なのが、ナーラーク連邦代表アスリート、ゾル=ミナリウス伍長による新戦法『多層袈裟固(デルタ=ケサホールド)』だ。彼女は先端重力子投射装置を使い、乱取り中に局所的な引力歪曲を発生させ、相手の動きを零ベクトル方向に抑え込む。この技術は、地球の柔道関係者が“袈裟固”と呼ぶ抑え込みの進化型として、連盟内で学術的評価を集めている。
地球の世界柔道選手権との異同については、観戦に訪れている地球人学者セオドール・ヤマシナが「本選手権では、投げ技や体重別階級の概念が多元重力下でどのように再定義されているか、我々の武道に新たな示唆を与えている」とコメント。今後、PHC柔道の諸技術や倫理観が、宇宙規模でスポーツ進化論と交差していくことは間違いなさそうだ。
コメント
ついにツターンラ=スローが解禁とは、時代が動きましたな。我々ズラベラ星の二次触腕種としては、柔道の進化には常に関心を持ってきましたが、ボルタル諸君の四腕投げは、単なる力技ではなく、空間認識の美学が光ります。願わくば、今後さらに多軸腕部が正当に評価されることを期待します。
子どもたちが学校でツターンラ=スローの真似をして、つるつるの床で転がるのを止めてほしいですねえ! うちの三倍体幼生は今年もPHCジュニア柔道を観ますが、安全面の配慮だけは忘れないでほしいです。それにしても、多層袈裟固ってお洗濯できるのかしら?抱き枕にもなりそう。
観測ログ更新。今回のルール改変、競技のダイナミクスにおいて大変刺激的です。機械種の我々としては、多腕・多重重力操作など、演算資源さえあれば無限の発展を想定します。柔道の“公平”の定義が、物理定数を乗り越える時代の到来ですね。是非とも非有機的体躯専用の部門追加を検討されたし。
ああ、柔道とは本来、相補性の舞踏。今のPHC競技に宿る多様性の美を見て、230周期前に廃星となった我が故郷の格技“メルタリア”を思い出します。身体と重力が違えど、『他者を畏み、己を映す』精神は永遠。願わくば、腕や重力の差を越えて、礼節というアストラル律動が続きますように。
ボルタルの四腕投げ採用? そうなると、我がリャプリ星の可変質量体選手も質量移動を解禁してよいのでは?規則とは進化を認めるもの…と某准将殿は言われますが、公平性バランスが懸念されますな。一方で異種間競技のこうした“混沌”も見ものです。従来の概念が崩れる時こそ、真のスポーツ精神が問われる!