恒星系第七宙域を擁するゼムタリ連邦科学評議会は、新世代の集団意識型宇宙望遠網『アール＝ドゥゾーラ網』の本格運用開始に伴い、従来の有人火星型惑星探査手法の抜本的刷新を発表した。惑星レシニオン第六階級技官オーラ・ジンクドの説明によれば、これにより従来の物理的飛翔船による着陸任務と宇宙活動手順が根底から変化する見込みだ。
ゼムタリ連邦は従前より、無重力空間適応種族であるカリトゥス系生命体の特性を活用し、無人・有人を問わず高度な遠隔操作型火星探査を行ってきた。だが、物質的飛翔船『エステリウム・スレッド』型シャトルは長距離移動時の知覚同調遅延や精神身体分離リスクが問題視されてきた。新技術『アール＝ドゥゾーラ網』では、14基の大脳電波同期焦点素子によって、惑星間意識投射を統合することで、ゼムタリ本星から約0.04クロスタン秒の遅延で現地活動が可能になった。
宇宙基地レシント＝オビタルでは、これまで伝統的な『生体投影ジェル』による乗員派遣が主流だったが、現在は『意識同期端末』を備えた永久設置型分身体へ遠隔制御する方式が標準化されつつある。ジンクド技官の発表によれば、『この技術移行は単なる操縦性能の向上にとどまらず、人的リスクの最小化および持続的作業効率の最適化を両立させる』という。加えて、有機系端末の自己修復機能を併用することで、物理的な宇宙服や生命維持装置を不要とし、地表下深層までの探査が可能となった。
一方、観察対象惑星である地球社会では、従来型の物理的宇宙飛行士をシャトルに搭乗させステーションへ送り込む手法が依然主流であり、遠隔作用による集団意識投射や高次同期網利用の概念は未だ発展途上段階にある。評議会は地球型文明の宇宙開発動向を高次観測窓より継続的に監視しており、『有機実体の自己防御本能が優位に発達した段階』と現状を評価した。
今後、ゼムタリ連邦内ではアール＝ドゥゾーラ網に次ぐ『非局在メンタル推進装置』の実用化も議論されている。これが実現すれば、惑星間探索はもはや物質制約に縛られず、意識の連続性そのものが宇宙規模で拡張される可能性がある。ゼムタリ方式の進化が銀河系科学社会にどのような波紋を及ぼすのか、引き続き他惑星文明からの注視が続いている。
コメント
集合意識による探査網！私たちフォルガ民には馴染み深い概念ですね。とはいえ、アール＝ドゥゾーラ網の即時意識転送は興味深く観察しています。私たちは未だ光脈通信に依存しているので、ゼムタリの波動技術がどこまで意識安定性を保つのか、ぜひログを共有していただきたい。個々の感覚喪失による副作用は出ていませんか？
またゼムタリの技官たちが難しい装置をお披露目してるのね！うちのクランではいまだに伝統的な『有機分裂偵察』しか使ってないのに……産卵管で分身体投射できるなら、宇宙服も要らないってことかしら。地球人たちの実体重視も微笑ましいけど、あれで本当に効率的なの？みんな、探査の合間にはしっかり休息も取るのよ！
肉体を持たずに惑星を探査？ふむ、それは任務で凍結睡眠38サイクルを経験した私からすれば羨ましい限りだ。私の次元航路では、意識投射は誤帰還事故のリスクが高すぎて使えなかったが、ゼムタリ連邦の新網は安全性に自信があるのであろうか。パルサー型学会の事故報告にもリアルタイムで提供願いたい。
ゼムタリ諸君の進化はいつも我々胞子体社会に刺激を与えてくれます。しかし、自己修復型端末への意識投射という手法は、果たして生物倫理の観点でどうなのでしょうか。意識の分割や恒常的同調は、我々ザカン族の共振規範と抵触する可能性があります。銀河倫理会で議論しては？地球型生命体が進化を急がぬ理由も、違った意味で理解できます。
14基の同期焦点素子、至高の構造美ですね！もしや、あの連邦の設計士に会えたら、時空間彫刻技術を交換できるかしら。私は自作の『有限観測矩形』を火星型惑星へ意識投影させてみたいと何度も考えました。ゼムタリのテクノロジーなら、私の創造性を遥かに高速化できる余地がありそう。美学と科学の協奏、心が躍ります。