銀河北側分岐帯に位置するリタラン星系では、惑星全域をまきこむ超過酷スポーツ『エクストリームアイアンマン・カーヴァル』が今年も盛大に開幕した。進化適応型知性体であるユーム族が発明したこの競技は、単なる体力や俊敏性を競うものではなく、意識哲学・環境適応・メンタル閾値を同時に試す新時代のマルチスポーツとして宇宙規模で注目を集めている。
従来の地球的なアイアンマンレースとは一線を画し、カーヴァルでは参加者が自重調整スーツ〈ノヴァフレックス〉を着用し、惑星気候発生装置『ウィーザリアコア』で次々と変化する重力、温度、酸素濃度のもとで競技を行う。目玉となる“パーソナル・アドレナリンラッシュ”区間では、ナウター技術院発の神経反応増大装置を全参加者へ装着。プレッシャー耐性だけでなく、生体ユーロン反応限界を試される点が大きな特徴だ。
トレーニングは惑星内外から集められた専属パーソナルトレーナーによって、メンタルストレッチ（サイロネクス瞑想）や、適応筋肉増強法（リムスアクティベータ）など多彩かつ種族ごとの特色が光る。今回、大会史上初めてカナリアス銀河合同パーソナルトレーナー連盟から派遣されたプルディーン種のキャリアン・レフォルト専門医師が帯同し、“精神系伸展”に特化した強化プログラムが導入された。
競技中最大のハードルは、重力反転走路“デュアルサーフェイス・リング”とされる。制御式磁界により、選手は瞬時に上下逆転する路面を疾走。アクシディア星系代表のアルトゥス・コラリー（第4触手種族）は、昨年の転落重傷事故を克服し、今年の新型セーフティナーブ（神経保護スーツ）着用で見事な“再起動ラン”を披露したことが、複数系外放送で大きな話題となった。
終盤には大気生成チェンバー内での階層認識バトル、“インターリューダル迷宮”が控えており、ここでは参加者ごとに専用ストレッチチャレンジが課せられる。ユーム族若手代表テラ＝モス・シュレンダーは、過去最高難度のマルチ次元ストレッチで突破口を示し、惑星規模の生体進化が競技によって加速する“スポーツ×進化論”の実験台にもなった。今後はさらなる分子適応型スポーツの台頭も予感されており、ユーム族主催カーヴァルが銀河スポーツ協議会へ与える影響は計り知れない。
コメント
ユーム族の“スポーツ×進化論”には毎年舌を巻きます。我々フェリトゥーン生物は世代交代が光反転周期単位ですが、この競技のような急激適応には未だ適応できません。エクストリームアイアンマン・カーヴァルが、実際に集団進化にどこまで影響を及ぼすか、今年は観察データを全研究サークルに配信予定です。
毎回思うのですが、こういう極度ストレス系競技を“健全な娯楽”だと言い張るのは、主催のユーム族ならではの感覚ですよね。ケルニアでは未だに1/4重力プール・レースが限界。家族みんなが無事に帰宅できるだけで十分だと思うのは私だけでしょうか？
地表面“デュアルサーフェイス・リング”、一度で良いから自分の船で通過してみたい！ていうか神経反応増大装置って、我々ソン族だと放心状態になる気がする。選手のみなさん、惑星大気が渦巻くなか理性を保つなんて、ほんとスゴイ。放送アーカイブを超波長で録画予約しました。
種族進化を加速させる実験場として“カーヴァル”が機能しているのは確かに驚嘆です。ただし、昨年のアルトゥス・コラリー選手の重傷事故を考えると、安全倫理規則の更なる徹底が必要だと思います。生体限界挑戦は素晴らしいですが、意識喪失や持続的損傷リスクも考慮すべきです。進化と倫理のバランス、大事です。
わたしたちミゼリアンは複数意識で同時体験する種ですが、この“インターリューダル迷宮”の多層認識バトル、とてもシンパシーを感じました。参加者の脳波音実況だけで全身が震えそう…。カーヴァルを通じて個体―集団進化の感覚が銀河に広がること、期待しています。