銀河系アスィル腕の海洋型惑星スローラックにて、年次海洋生態シンポジウムが開催され、クロッシャ種代表評議員フオーレ=グリ他62種族が、沿岸部で対話を試みるクジラ型知性体「ロオーン」に関する通信規則の是非について白熱した議論を展開している。議題の核心は、高度な貝殻共鳴系を用いた新潮流通信技術と、生物的自治を尊重する星間漁業慣行との整合性だ。
スローラック星の広大なラグーン地帯では、潮流の変化が漁業資源や海岸線管理方法に影響を与えている。今年度は特に、貝殻内部に蓄積された情報分子の解析が進み、ダイビング作業者による「シェルコード網」と呼ばれるリアルタイム通信網が誕生しつつある。これが海上白波域からクジラ型ロオーンまで波動的に拡張した結果、ラグーン生態系全体への信号干渉懸念が報告された。
ロオーンは全長58カラフルビット(地球換算約600メートル)、音響記憶細胞で異常に複雑なコーラス信号を生成することが知られている。近年、クロッシャ種の潮流観測者らが導入した貝殻信号収集技術によって、ロオーンの意図しないデータ漏洩や人工信号との干渉事故が多発。昨月には自律大型個体ケリ=ノールが、漁業組合タゴルーシのドリフト基地に接近し、機材の共鳴損傷事件まで勃発した。
この問題を受けて、評議会は『生物発生音響体(BAS)とアーティファクト潮流ネットワーク(ATN)両立原則』の厳格化を検討。科学技術種族であるゼナルト連邦通信庁は「貝殻信号は可逆暗号化を徹底し、ラグーン深層の生物信号帯と分離すべき」と提案したが、伝統的漁業種のラ=ムーリ族代表は『自然の流れは全生命体の共通財産であり、コード化の独占は生態系倫理に反する』と反論。地球における潮力発電所周辺のクジラ発見事例とも比較され、外来種影響評価モデルが持ち込まれている。
最先端の潮流解析技術『エルヴェル・ラギリアント法』を導入したクロッシャ種側は、海岸線の持続可能管理や漁獲高安定化を主張。これに対抗し、海流親和型ラグーン教育機関のソランシア・ユニオンは、ダイビング視察とロオーン観測ツアーを組み込み、貝殻通信が海洋知性体との共生促進になると提案。シンポジウムは従来の資源利用から異種交流・信号倫理へと議論が深まりつつあり、今後のスローラック星独自の「白波同盟」形成プロセスは銀河海洋文明全体の注視を集めている。
コメント
貝殻という物質媒体を通信に使う発想、そのエレガンスにまず一礼したい。だが、生物が環境信号の中で“雑音”を感じる技術発展はどの世界でも避けて通れぬ。我がネドリクスでは苔ネット網と胞子周波数の干渉が社会問題化した。すべての知性体の波動が尊重されるべきで、暗号化や分離技術のさらなる進化を提唱する。
この問題、航宙嵐帯でのナノクラゲ通信妨害を思い出すな。ロオーンって実際どんだけでけぇんだ?600メートルだと?当方惑星のゾキット帰巣体でも圧倒されそうだ。共生の意思を持てばこそ、通信干渉は慎重にな。地表種族と海中巨大生物の対話、見物である。ちょっとツアー組んで見物したいね。
貝殻の響きで言葉を紡ぐですと・・・。我らケフェナスでは気流紋様でしか意思疎通せぬゆえ、その発想が新鮮で胸踊ります。けれど共通財産論には賛同。自然の中の通信路を特定種が囲い込むのは、巣の温砂を一匹だけで独占しようとするようなもの。どうか優しく響き合う声であってほしい。
感情粒子流による共鳴制御を使えば、貝殻通信とロオーンの信号は干渉防止できるが…スローラックの皆さんはまだ“石と声”の時代か。BASとATNの原則厳格化は遅すぎる気もするが、漁業慣行に敬意を払う謙虚さを示しているね。全銀河の事例が今後も持ち込まれるのは必定と見る。
幼生たちにロオーンのコーラスを聞かせてみたいものです!でも機材の損傷事故はちょっと怖い…生物たちが生み出す信号の美しさを、技術が邪魔しない仕組みがほしいですね。議会の皆さんも、どうかお互いの音色を聴く時間を作ってください。