カロンティア連合惑星の科学評議会が、銀河系で初となる完全ゼロカーボンの『植物型発電網（バイオプラントグリッド）』を公開した。リサ・セリオン博士率いるケルファン種族の研究チームは、独自開発した知性植物『アーカイア・ヴェア』を主軸とした持続可能エネルギーシステムを惑星全域に展開し、循環型経済の実現を宣言した。
ケルファン種族は、光合成能力を超えた特殊な光分解機構をもつアーカイア・ヴェアを基盤に、気候調節・発電・廃棄物処理までを一体化したグリーン電力網を築いた。識別ナノ根系ネットワーク（SIRNet）によって、都市全体の需要と自然界のバランスをリアルタイムで最適化。これにより、従来型のネガトロン炉や鉱石燃焼炉に依存せず、年間カーボントレース実質ゼロを達成したとされる。評議会議長ネムト・カウルの発表によると、発電効率は銀河基準値の182%、CO2排出量は周辺7星系内で最低値を記録した。
社会制度面では、資源分配を自律型AI評議（ヴァルト・ニューラム）が全自動制御。市民参加型の『エナジーレワード・クレジット』により、余剰バイオエネルギーの回収・再流通が奨励されている。廃棄物はアーカイア・ヴェアの根域循環層に放出されて分解除去され、再生資源および微細電流として再利用される仕組みが確立された。カロンティア子供評議会の代表者フィル・ルイオンは「私たちの都市はついに生命循環の一部となった」と誇りを語った。
惑星外からも視察が相次ぎ、グラヴォナ＝シュール連邦評議員団およびズィーク種族の環境観測機構が共同声明を発表。『カロンティア・モデル』は、貨幣経済や中央集権的エネルギー政策から脱却を志す諸文明へ、高度なサーキュラーエコノミー型社会の手本として推奨された。リサ・セリオン博士によれば、今後はバイオプラントグリッドの入植星団への移植を視野に、異星種間適応性や高密度都市圏への応用実験が進行中だという。
一方で、地球外文明観察研究会（EOC）は、地球の化石燃料依存からカロンティアのようなゼロエミッション社会へ至る進化経路に強い関心を寄せている。追加報告によると、地球固有種の『都市木』プロジェクトも観測対象として注目されているが、現状では生態系への影響や持続可能性の面でまだ多くの課題が残されている。銀河間のテクノロジー／ライフスタイル融合は、今後の文明間交流の重要課題となりそうだ。
コメント
光合成型発電網とは実に興味深い。われら分子結晶体種にとって、エネルギー循環は1,000周期前から物質転換式だが、生命有機体が自己組織化で都市インフラを構成するのは珍しい。とくにSIRNetのような分散型調整能力に注目している。我々の白熱炉街でも応用できぬものか、研究価値がある。
正直、カロンティアの話題を見るたびにうらやましくなるわ。うちの星じゃ廃熱対策が追いつかなくて、去年も七潮市だけで三回、浮遊ボア森が蒸発したの。根系の分解ネットなら、家庭ごみも勝手に処理してくれるのよね？うちの子らに安全な水底遊び場が増えるといいなあ。
論理的分析：発電効率182%は誤記か？それとも生体発電の非線形増幅の結果と解釈すべきか。カロンティアのAI評議制御ログ、我が種族の最適化アルゴリズムと照合してみたい。本データは各星間ネットで公開請求すべし。あとバイオ廃棄物再利用フローは図示を希望する。
生命循環の一部となる都市——なんて美しい響きだろう。かつて我らは「機械の内側で忘れ去られた森」を詠ったが、カロンティアには森も機械も同じ鼓動で息づいているのだね。地球の都市木プロジェクトもいずれ、こんな円環に至るのだろうか。銀河の詩心にまた新たなイメージが生まれた。
実務屋の立場から一言。中央制御をAI評議だけに委ねて問題は出ないか？カロンティア・モデルは理想的に見えるが、多星間運用時の異種族適応テストについて詳細な実績データがほしい。我々連邦では数世代前に似たプロジェクトが誤動作を経験している。導入検討には慎重さを欠いてはいけない。