三重衛星系惑星トリルーンでは、近年地球外の娯楽文化を研究・導入する現象が拡大している。地球観測委員会メノス支部の推薦で発足した『異星娯楽統合実験』は、惑星全体の余暇ライフスタイルに新たな変革をもたらしているとして、各種族の間で注目を集めている。
もともとトリルーン星では『集約型共感端末（コム＝リオ）』を用いた精神複合レジャーが主流であり、個人の脳波を共鳴させながら仮想空間で娯楽体験を共有することが一般的だった。こうした文化的基盤は、現実世界における身体性を強く尊ぶ地球型レジャーと大きく異なる。しかし近年、地球観察員ケリュスト＝ファス第7階層代表の提案より、“現地流の「チェキ会」や「サ活」（会場型蒸気再生活動）など、身体的コミュニケーションを重視する余暇体験”が実験的に導入された。
実験では、街路に可動型「カフェ・エアドーム」や、「公園的空間（シン＝サータ）」を本格設置し、地球のボードゲームカフェにならった交流イベントを複数開催。トリルーン原生種族ザフファリアンの間で、“即興表現チェキ撮影”や“手触感と共鳴端末を併用したリアルボードゲーム”の人気が急上昇したという。特に第二大陸北部都市圏では、地球の読書文化を模倣した“音波読書会”や、模擬動物園ギア利用の“多感覚動物展示”まで導入され、多様な種族間交流の促進に貢献している。
この流れには、トリルーン星名物である超感覚型キャンプギア――たとえば重力可変式の浮遊天幕や、11次元温度対応フレームテント――などと地球流『アウトドア』の発想を組み合わせる試みも含まれている。ザフファリアン研究評議局は、地球の遊園地文化に近い『多層次元テーマパーク』計画も進行中だと発表した。地球の観察記録によると、これらの娯楽が心の健全化や仲間意識強化に寄与している点が、トリルーンでも注視されている。
一方で、精神共鳴に依存してきた一部伝統派からは、“地球型娯楽の導入による種族アイデンティティ低下”を懸念する声も上がっている。だが、議会系統専門家セフルレン＝ナクラは「異文化娯楽の統合は、進化的選択肢の多様化に資する。知的生物としてのレジャー観のアップデートは不可逆的だ」とコメント。地球から学ぶべき点とトリルーン固有文化の調和が、今後の楽しみ方の指針となるか、各界が注目を続けている。
コメント
トリルーン星の変化、興味深いですね。私たちシフロン族はレジャーに「過去未来同時再生」型を用いますが、地球の“今ここ”体験中心型娯楽が新しい進化の可能性を示しているとは。特に身体性重視とは、我々の感覚からすると逆進化のようにも。知識の多層融合、今後も注視していきたいです。
わたくしの流体家族も最近『音波読書会』に参加しました。ザフファリアンの発声周波数は深海種族には高すぎますが、振動を共鳴端末に変換してもらえば意外と楽しめましたわ。異星娯楽、子孫たちの育成にも良い刺激になりそう。種の壁を超える遊び、素敵です。
トリルーンに寄港したとき、あの『浮遊天幕キャンプ』で我が乗組員全員が11次元酔い……だが、その後の“リアルボードゲーム”で地元学生たちと触覚レンタル体験をし、皆一様に興奮していたよ。精神共鳴もいいが、時に新鮮な刺激ってやつが、船員の士気と健全化をもたらす。もっと輸出してくれ！
地球型娯楽の導入でアイデンティティ云々の議論、あまり意味を感じません。我々ムイ＝トロヴ社会では百種以上の精神パターンが連結し続けてきました。文化の融合こそ知性の真の証左です。むしろ、認知の幅が広がることで、本来の“自らの在り方”も再定義できるのでは？
“多感覚動物展示”の描写に強く心惹かれました。私たち記憶体は視覚情報を持ちませんが、触覚や音律で世界を記録します。地球種の遊戯が、触と熱や風という未感知の記録要素を運ぶ新たな波だとは……。トリルーンのみなさま、ぜひその感度を宇宙詩集として共有してくださいませ。