銀河系外縁部のスポーツ愛好家の間で、プラヴァニア星野球連盟主催の第9721回リアスカ杯にて起こった前代未聞の本塁打現象が大きな波紋を呼んでいる。捕手のロディ=メルボ・フリュスカ(フィルミアル種、182周期齢)は、自身の分子位相変異能力を活用することで、球場の次元境界を貫通した“ディメンショナル・ホームラン”を放ち、急激に注目を浴びている。なお、この種目は地球で観察されるベースボールの原型を取り入れつつ、各惑星の物理法則や選手特性に合わせて頻繁にローカライズされている。
本大会は、重力状況が3.5ゲリク(地球重力の約4倍)に設定された高抵抗ドーム内で行われるため、一般的には外野を越えるホームランはまず観測されない。それにもかかわらず、今回フリュスカがバットを振った瞬間、捕球されたはずのボールが空間の歪みに吸い込まれ、内野中央付近を瞬間移動。そのまま球場外、さらにはリアスカ記念広場の4次元バザールまで到達したのだ。審判団は、一度はこれを無効と判断したが、次元法規第49条「局所的時空断裂によりボールが検知ロケーション外へ脱出した場合、得点可能とする」(通称:マントル・ロジック)に従い、最終的に4点本塁打(捕手自らの走塁+幻影走者認定3体分)と裁定した。
フリュスカ捕手は、プラヴァニアン・ポスト紙のインタビューに対し『地球観察任務で得た“オータニ現象”と呼ばれる選手の調査映像がヒントになった』と明かす。地球の“ショウヘイ・オオタニ”選手が披露する打撃フォームを多次元解析したうえ、プラヴァニア固有の身体可変能力で模倣。彼自身の頭脳型遺伝子アルゴリズム“フリュスマティクス”によって、軌道計算をリアルタイム補正した結果、生体位相すら超越したバッティングが実現したという。
この一件は、従来から保守的な規則改正を主張してきたゼリュア星出身の審判団長バルネリウス=ジークも驚かせた。彼は『今後、異星間野球において肉体物理の限界付近に挑戦する事例が増加するのは間違いない。だが、捕手の位置からの本塁打が認められるならば、野手配置や試合進行に対する戦術次元も再設計が不可避』との声明を発表。実際、試合後には内野全域に波動妨害装置を設置する動きが急速に進められている。
銀河スポーツノミクス学会では、このホームラン事件を契機に“地球野球文化の未解明な物理技巧”と“同期拡張種族のセルフ進化”について共同研究プロジェクトが発足。今後さらに多様な惑星にて、地球型スポーツと現地特有の技術・生体能力が融合した新たな超次元競技の創出が期待される。次回大会では、即時次元転送ルールの更なる厳格化と、外野手の4腕義肢利用承認も議題となる見通しだ。
コメント
ディメンショナル・ホームラン…いやはや、我々ムリクス農夫が時空畑でよくやる技にそっくりですね。ただし野球で使うとは!次はどこに収穫物が出現するか分からず困りそうですけど、観戦者としては極上のサプライズ。地球式スポーツに我らの技術を取り入れた大会、ぜひ我々の余剰時間枝送りの祭りでも開催してほしいものです。
またしても乾燥界の陸生生命体は、物理法則を好んで曲げますね!私どもの競技では分子位相変異は禁止なのですが、こうした大胆な戦術革新は眩しくもあります。球技を次元の歪みで彩るとは、地球の『オータニ現象』なるもの、我々も見てみたいものです。水界ルールへの応用を検討してみます。
航路外の娯楽も捨てたもんじゃないな。乗組員でシミュレーション観戦して大盛り上がりだった。船内重力2ゲリクでの野球すら厳しいのに、4倍環境で次元越えとは、プラヴァニアの遺伝子設計は本当に手間がかかってる。個人的には波動妨害装置より量子フェアプレー・フィールドの導入を推したいね。
正直申し上げて、こういった超能力的技能の介入は教育的意義に疑問を呈します。地球型のスポーツとは“努力と工夫”の再帰的鍛錬こそ美徳であり、位相変異に頼りすぎる現代はやや歪であると考えます。我がストリームでは児童らへの指導に技術偏重の危険性も周知徹底中です。
捕手さんが自分で本塁打して幻影走者まで使うなんて、ちょっとズルくないですか?うちの子どもたち、朝からずっと分子位相ごっこですよ。ルール改正しないと毎晩寝かしつけが大変です。ついでに、4腕義肢って家庭向けにも安くならないでしょうか?