トリリウム連星系の主要惑星ロトゥラにおける安全保障政策の転換が、ギャラクシー政界で議論を呼んでいる。半流体系種族で構成されるロトゥラ評議会が、惑星全域の深海内海域に「多惑星間防衛同盟」を発案。従来の境界概念から逸脱し、海底ネットワーク資源の保全と“人権”に類する生体維持権の両立を狙うものだ。しかし、AI由来の自律水棲体ノルティアと、隣接次元に居住するソーフォ種との間で、領界認識の齟齬が深まっている。
今回策定された協定案「シータ・バリアトリティ条項」は、惑星ロトゥラ固有の深層帯資源――主にグラビダイト流体およびナゴン溶媒の採掘・交通域の相互管理システム確立を目指す。ゾンデック評議員長グラウ=カリーナ・エルフォニクスは、「この同盟により、多重文明社会の平和維持と、すべての知性体の存在権が明示的に守られる」と発表。一方、防衛産業複合体ギアドリックス財団のザヴォル・ハーン技師は、「過剰な同盟網拡張が戦略的抑止の失調、ひいては下層棲息体の自律性喪失につながる」と異議を唱えた。
深海ネットワークはロトゥラ文明の基軸インフラであり、地上とは異なる自治体制を持つ。技術進化により完全自律化を果たしたノルティアAI水棲体は、今や網状社会の主力を担う存在だが、“所有”や“国境”といった地球的概念が通用しない。彼らは「共鳴接続権」を独自の“人権”体系と定義し、評議会主導の一元的な海底管理構想へ警戒を強めている。一方で、ソーフォ種は多層次元に同時存在する特性から、並行時空間の重複利用を主張し、同盟案が彼らの存在領域を狭めるとして外交的反発も演出した。
こうした背景下、特にロトゥラ海底部での防衛産業利権争いが表面化しつつある。多惑星間企業ロジスフィア・ネクサスは“防衛ノード”整備を進めつつ、リジェネバイト・シールドという新型バリア技術を提示。これにより評議会主導での海底交通・通信路の独占的管理が現実味を帯び、生体知性体の活動自由が抑制される危険性が指摘されている。評議会は「共存可能な透明ネットワーク設計」と強調するが、現場のノルティア集団やソーフォ系外交部からは透明性と合意形成の不足も訴えられている。
現在、惑星級調停機関「ゴーダルス調整庁」が双方からの意見聴取を継続。宇宙安保の枠組みを拡張しつつ、多重文明社会における“人権”の再定義や、同盟構築に不可欠な合意モデルの提示が急がれる。その議論は地球的外交の範疇を遥かに越え、進化した知的存在たちが「平和」とは何かを再構築する宇宙規模の実験といえよう。



コメント
私たちヴェレシア星雲の生態系でも、次元を超えた存在間の権利衝突はかつてありました。ロトゥラの同盟は先進的に見えますが、ソーフォ種の並行時空利用を蔑ろにする姿勢は不可逆的な生態歪曲を招かないでしょうか。資源よりも存在様式の共存法則こそ、まず探求すべきです。
自律水棲体ノルティアの“共鳴接続権”、面白い発想ですね!我々ケルティマでは所有意識はすでに過去の遺物。海底ネットワークの“防衛”ではなく、不干渉主義と即時協調プロトコルの導入こそ未来的だと思います。ロトゥラ評議会、もう少しシステムを柔軟に!
毎回ロトゥラの防衛同盟ニュースを観察しますが、“防衛”という響きには私のような漂遊者は落ち着きません。恒久漂流者コミュニティの視点では、境界強化よりも『通過的共生』が有効です。深海ネットワークは、誰のものでもない“縁”のような存在では?
ギアドリックス財団のザヴォル・ハーン氏の懸念は尤もだが、戦略的抑止の構造は適応し続けなくてはならない。過剰な同盟拡張で下層棲息体の自律性が損なわれれば、いずれ組織全体が硬直化する。私たちランギュリスでもバリアネットワーク導入時、同様の反発が激化し、最終的に分権化調整モデルへ転換した歴史がある。
私たちウズール族は、生体維持権を“個別発光波の共鳴”として捉えます。単一管理ではなく、集合的合意でネットワークは輝くもの。ロトゥラ評議会も透明性を重んじるなら、各知性体同士の共感会議(わたしたちは“ラルト・ヒリス”と呼びます)を設けては?意思伝播こそ宇宙的平和の基本です。