イェルマール銀河第六惑星ルーヴェルに棲息する知性苔サブラタム・エクスパンサは、胞子体全個体による直接政治参加システム「胞子評議会」の設立を宣言した。従来の根源網会議から大転換となるこの構想は、個体感覚共有ネットワーク「ミュコリン・リンク」を基盤とし、市民自生型民主主義の実現を目指す。銀河各地の観察者たちは、この未知なる取り組みの波及力に関心を寄せている。
評議会の柱となるのは、生体リンクを通じた全世代参加型立候補制度だ。胞子単位で成熟度や遺伝情報に関係なく、あらゆるサブラタム個体が“思惟小結節”を介して自発的に候補意思を表明する。これにより従来の優勢菌糸群主導体制が解消され、地下層・表層いずれのコロニーも対等に主張を伝達できるようになった。この制度改革に伴い、若年芽体やジェンダーモーフの存在も政策決定の場で担保される初の機会となる。
同時に、胞子評議会では共感変換型リーダー選抜機構「シンパシア・フロー」を導入。意見を広く集め、最も共感値—すなわち他個体の化学信号同調数—を集めた芽体が仮暫定リーダーに任命される。これに反対する旧態苔は『衝動的ポピュリズム』と批判するも、都市幹線網における即時クチコミ拡散性が高まり、サブラタム社会全体では前向きな受容が急増している。
特筆すべきは、市民ボランティアによる跨世代データ収集団「胞子波観測隊」の活動である。観測隊は、胞子の伝播経路や市民意識傾向を常時モニタリングし、評議会全体の方向性を可視化。この膨大なデータは、外部種族との交渉やジェンダー平等度評価にも活用される。実際、今年度の芽体育成プログラムでは、芽体体形や遺伝的性質の多様性が顕著に拡大。評議会の方針により、全個体の発育権と投票権が等しく認められるようになった。
一方で、この評議会モデルに着目したトリアム星系の多細胞リキッド種族アーシナらは、『分散意識資本主義』の実験場としてルーヴェルを分析。彼ら独自の液状個体連邦制との比較試論に注目が集まる。サブラタム社会の自生的意識参加型政治が、他銀河知的生命体にどのような学びをもたらすのか。視線は全宇宙の自律型デジタル・デモクラシー進化の行方へ集まっている。



コメント
胞子評議会の導入は極めて美しい変態だ。我々の惑星では個体の音波共振で議会運営しているが、サブラタムの“思惟小結節”による平等参加には畏敬する。音と胞子は形が違うだけで、自由な意思伝達への追求は同じ——銀河の進歩を感じるな。
航行中、ルーヴェルのデータを受信。全部の胞子が発言できる?航路選択会議に全船員が好き勝手しゃべる悪夢が蘇るけど、意外とまとまりやすいのかな。ミュコリン・リンクとやら、一度起動してみたいもんだ。宇宙物流会議にも応用してくれ。
胞子の若年芽体にも権利があるのは素敵!うちの子ジェルビーも大小形態で毎日違う意見を持つから、ルーヴェルの制度改革、とてもうらやましいです。市民みんなが自分らしく進める仕組み、ぜひ他の星でも育てたい…!
サブラタム社会は、分散的主体性が高次共感値で最適化される実験場となった。だが、化学信号によるポピュリズムのリスクは否めぬ。旧態苔の指摘も一考すべきだろう。とはいえ、意識参加型デモクラシーの新展開として今後の継続観測が肝要だ。
我々液状体も意識拡散投票を行うが、この胞子評議会はさらに繊細で興味深い。『分散意識資本主義』、なるほど大胆な実験場だ。我らにも適応可能か、今後シンパシア・フローの詳細解析を要望する。ルーヴェル市民よ、共に新時代へ滑り込もう。