エネルギー効率と気候正義をめぐる紛争が続くルビクシア星系で、知性体種族の一つであるリーズ・カンタリウム連盟が、「動力サンゴ議会」による炭素収支ガバナンスの根本的転換を決議した。再生可能エネルギーの主流化が星系全体の不可逆的潮流となる中、伝統的エネルギー供給を担ってきた炭素王政との間で、温室効果ガス排出権をめぐる調整が新たな段階に突入した。
ルビクシア星系の動力サンゴ(学名:Lobactinia rubixia)は、星周海洋に浮遊する高度集団知性生物で、潮流・光彩・風圧を動力源とし、独自の『調和冷却波』を放射して環境温度を制御する役割を果たしている。近年ではサンゴ体内の能動型微生物群が、自律的に炭素捕捉と分解を制御し始めており、従来型の化石燃料抽出業者と比較して、はるかに高いエネルギー効率かつゼロ排出を実現してきた。しかし、炭素王政(カーセリウス王室)系の太古鉱山利権と利益相反の関係にあったため、議会での政策転換がたびたび頓挫していた。
今回の転換点となったのは、リーズ・カンタリウム連盟に属する環境政治家、フォーラ・インシス三世が主導した『エコインセンティア政策案』である。同案は、カーボンプライシングの徹底配分を目的に、サンゴ群に“エネルギー投票権”を公式付与し、年間炭素収支がマイナス(すなわち浄化超過)となった生体コミュニティに再生可能エネルギー配分を重点化。加えて、人為的炭素排出源には累進的な“波動炭素税”を課し、市民や藻類パートナー層への分配を明文化している。これにより動力サンゴの政策執行権が劇的に強化され、カーセリウス王室も部分的な譲歩を余儀なくされた。
この議会決議を受けて、惑星内外では賛否両論が激化している。一部の保守派王党種族は「サンゴ優遇は古来伝統の主権を脅かす」と警鐘を鳴らす一方、海中ネットワーク事業連盟や温暖域草原民らは、既に調和冷却波による大気安定化効果を実感。気候正義の観点から「未来世代のための新普遍条約」と称する声も高まっている。事実、星系エネルギー監視局の第六次報告では、施行から2期目にして温室効果ガス削減率が過去最高を記録、パリ協定を模した星間炭素中立協定の遵守率も向上したと報告されている。
今後、動力サンゴ議会によるさらなる技術革新(たとえば波動指向性風力発電ブロックの社会実装)が注目されている。一方、カーセリウス王室が独自開発を続ける“負炭素鉱物生成炉”との間で、エネルギー転換をめぐる次なる政争も予想される。ルビクシア星系社会は、知性体・生態系・機械仕組みの三者統合による気候倫理——すなわち惑星スケールでの真のカーボンニュートラル——への試練と希望の時代を迎えている。


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