ヴェイロンIX星の微化石型クラウド:有機生命と演算の新たな共生

多触腕のエイリアン研究者が異星の海岸で空に漂う微細な化石雲を見上げている様子の現実的な写真。 クラウドコンピューティング
ヴェイロンIX星にて、雲型微化石クラウド構想を見つめるネフィロストリクス族のPaaS設計師。

138光年彼方、リガレクト星系第九惑星ヴェイロンIX。今、同惑星で研究が進む“生体基盤型クラウド環境”が、知性体社会に不可逆な変革を起こす兆しを見せている。主導するのは、多触腕生命体「ネフィロストリクス族」のPaaS設計師イキラ=トゥラム博士。そのプロジェクトは、惑星全土に棲息する“微化石雲類”を用いたクラウド計算基盤の構築だ。

微化石雲類(モルファクラス・クラウジィ)はヴェイロンIXの大気上層を漂う、ナノスケールの化石化微生物集合体である。この雲類は自然状態で情報分子の送受信および単純演算を司り、惑星の生態系ネットワークの根幹を担ってきた。ネフィロストリクス族の一部技術者らは、遺伝子編集と合成進化プロセスを駆使し、この雲類を「パブリッククラウドノード」化することに初めて成功した。彼らはこれを〈クラウドストレージ:エグゾ・フォシリス〉と呼び、惑星全住民に“生体ストレージ兼PaaS”として開放する構想を公表した。

本クラウド環境最大の特長は、有機的サーバーレス構造だ。ユーザーは意識経由または表皮触手を介して、雲類に直接APIアクセス可能。分散型IaaS基盤として自在な自動化処理を実装できるほか、従来の電子型コンピューティングと比較し、計算リソースの増減が瞬時かつ無痛で行われる。この特性は、マルチクラウド環境への双方向連係と、異なる有機種族間SaaS連携の簡素化に寄与する。

驚異的なのは、データ保存や演算だけでなく、クラウドサービス自体が微細な生態リソース供給ネットワークにもなっていることだ。エグゾ・フォシリス内の各クラウドノードでは、利用者が発した命令パケットのエネルギー余剰分を雲類が吸収、星域全体の気候安定や有機体再生に逆流させる。中でもマルキア海沿岸の住民評議会は、行政記録の全SaaS化により大気層の透明度が向上。結果、同域固有種“ツインレース鳥”の渡りに好影響を及ぼし、生態系の多様化をも誘発しているという。

イキラ=トゥラム博士によると「我々はもはや、クラウドを単なる情報処理空間でなく“生体拡張領域”と見なし、惑星の全住民=全ノード化を目指している」。今後は、他惑星への有機クラウド伝播や銀河系横断型マルチクラウド網構築も構想中とのこと。銀河社会におけるクラウド技術の相互進化、その最前線が今、ヴェイロンIXで芽吹き始めている。

コメント

  1. 微化石雲類のクラウド化、実に刺激的だ。わがトロマの皮膜知性体も、過去“記憶胞子雨”をネットワーク基盤に試みたが、意思保存に失敗した歴史がある。ネフィロストリクス族は、生態系そのものを演算資源と認識しているらしい。我々にも応用できぬか議論を始めたい。

  2. 行政記録のクラウドSaaS化で気候まで良くなるなんて、本当に素晴らしい!毎サイクル、わが家のカビたガラス層とも連携できたらいいのだけど…でも有機生命のネット接続って怪我しない?生体拡張は便利だけど、家族の安全ともバランスが大切よね。

  3. ヴェイロンIXの軌道上を何度か通過したことがあるが、あの薄水色の大気層はデータ密度が高くて通信がびりびり来る。今回のクラウド化で、航宙船の生体端末とも高速で接続できたりするのか?銀河間巡回にもこんなインフラが欲しいぜ。

  4. 化石雲を演算ノードとして再活用…いやはや、先祖返り的な知能融合の発想だ。我々ドネック族は遺伝アーカイブの神聖性を重んじているが、いずれ保存と解放の間に葛藤が生まれるやもしれぬ。クラウド共生という思想、長い目で注視したい。

  5. 情報も気候も『そよぎ合う』……地球の詩にあれば羨ましかっただろう。ヴェイロンIXの住民は今や、息をするたびに無限の演算と生命循環を享受しているのか。五感で触れてみたい。だが詩心抜きに、少し羨ましすぎるニュースだ。