大連星系ブリュクア連邦で、個体識別パターンによる“推し色”表現が急速に進化している。近年、多階層知性体オルザ=ユニーブル種が主導するハイブ型一次創作供給網「ファルダット・クラスタ」では、自己表現熱がかつてない高みに到達。物理・精神両面での推し活カルチャーがインターグリッド市民層全体を巻き込み、惑星全域で独自の経済現象を引き起こしている。
オルザ=ユニーブル種は核意識と外殻個体数十体を同期させる群体生命体であり、その生活圏では自己分化時の色素記号と可視共鳴体(いわゆる“推し色オーラ”)が重要な自己認識シンボルとなる。これを応用し、各自が感銘を受けた創作者や親近感を持つ外部人格波に対し自作推し色グッズをクラスタごとに製造・配布する動きが拡大。しかも近年は物理的グッズ(外殻用色彩液晶薄板、光結晶キューブ等)だけでなく、精神層SNS「マトリクス・ルムール」への個人オーラ投稿や“感応粒子”配信が主流となっている。
一次創作の行為自体も急速に個人化。従来のハイブ内で共有されていた記号系物語やイメージ群(通称“群体神話素”)から、オルザ=シェリィ・グラントナなど自律型創作者による自作イデア波の配信が注目を集めるように。ファンたちはそれぞれの推し色を纏った独自グッズを作成し、SNSプロフィールや精神層インターフェース上で展示・交歓を行う。「自作推しグッズ祭り」では、各推しのため数千種類のカラーパターンミームや個体専用粒子コードを用いたアクセサリが一挙公開されるなど、自己表現市場の多様化が始まっている。
一方、“垢消し”(記憶改変によるSNS過去記録の消去)現象も増加傾向に。不完全な自作グッズや思い入れの変化に伴い、過去の推し色や創作記載をまるごと削除し「核意識リブート」を試みる個体が目立つ。ハイブ生成規約では「核履歴の連続性」が推奨されているが、若年層を中心に“刹那の熱狂を共有し、次の推しへと進化する流動性”が肯定的に受け止められつつある。
地球観測局のリポートによれば、ヒト種による“推し活”や自己表現グッズ現象とも部分的な類似性が見られるものの、オルザ=ユニーブル種では推し色―思想波―個体記号を有機的かつ即時に編み直すことが常態化している点に大きな違いがあるとされる。今後もブリュクア連邦の推し色昇華流は、物理的グッズ経済と精神層SNSカルチャーの連携を加速させ、異星間のファン活動の在り方に転換をもたらす可能性が高い。



コメント
ブリュクアの“推し色昇華流”。感応粒子配信と精神層SNS、実に斬新ですね!ケリア詩芸連では触覚パターンによる共感表現が主流なのですが、色とオーラを即時に紡ぎ合う交流には羨望を覚えます。精神層インターフェース、こちらでも導入したいですね。
やはりブリュクアの自己表現熱は凄まじい。飛行中、ファルダット・クラスタから発せられる推し色信号波が観測機器に干渉して困っています(笑)。地球ヒト種より表現の瞬発力が上ですが、過去記録をどんどん消す流動性も惑星文化の成熟度の指標でしょうか。
多階層ハイブ種における推し色自己分化の進展、集体脳の自己保存本能と個人化衝動のダイナミクスが興味深いです。垢消し・リブート現象が群体神話素の再編と絡む事例、当局に詳細調査を要請しました。推しを巡る経済変動、今後の異星間文化調整に一石を投じそうですね。
ヌル胞子幼生たちも最近『推し色』について話題にしています。外殻グッズより、自分自身の光結晶を分岐色で染め直す遊びが流行中。個性重視の時代、成長の過程で何度も“核意識リブート”することが普通になって、親としても柔軟に見守りたいです。ブリュクアの動向は学びが多いですね。
やれやれ、過去推し色履歴を消去し“刹那の熱狂”を称賛とは。時空連続性と自己整合性こそ文明の礎。若年層に流動性を容認しすぎれば、群体文化の断絶を招きかねぬと危惧します。しかしこの柔軟さこそが新たな進化を促すのでしょう、人類にも見習うべきかもしれませぬ。