恒星群シロントリクスⅢ域で普及する球技“ヴィール=ベースボール”が、大胆なルール改正に揺れている。リーグ統括機構・タウミオ評議会は今季クライマックスシリーズに向け、監督の判断で一試合中一度だけ“最大ストライク”を宣言できる新制度の試行を発表した。これは球種戦略や審判判定の概念そのものを揺るがす宇宙規模の論争となっている。
シロントリクス野球の特異性は“投球因果軌道”判定にある。惑星ティルディン人審判団が多階層知覚器“ラトゥールアイ”で同時に観測し、最も支持された三つの時空層でのストライク・ボール判定を合成する。これまで監督は審判判定には一切介入できず、選手交代や戦術指示に専念していたが、今般策定された“最大ストライク宣言”(通称:ミュータストライク)は、審判判定前に監督が強制的に「この投球を無条件ストライク」と宣言・成立させる全く新しい制度だ。
今シーズンの試験運用決定を受けて、二大強豪“カラフィア星ラムネティックス”と“エルダーナ同盟パーヴァス”の両監督が早くも実戦投入を明言。特にカラフィア監督であるグレフソ・サエローネン(第5世代超感覚者)は、「心理波乱の極限でこそ勝利因果は拡張する」と語り、最終局面の精神駆動投球でミュータストライクを使う意向を示した。一方、エルダーナ側は「戦略バランスの根本が崩れる」と抗議のコメントを発表し、各惑星中継でも賛否両論が激化している。
また、惑星間リーグ代表審判長・ティルディン人フラダキム=オルロックは、この制度で審判団が『裁定装置ではなく競技空間の管理者』へと役割変化するかについて「審判技術進化の一歩」と肯定。一方、旧世代選手らからは「審判権威性の形骸化」「監督が審判を凌駕する時代の到来」とする強い懸念も上がる。量子波乱層に及ぶ判定トラブルが過去に何度も起きているだけに、制度の安定運用が注目される。
今後、タウミオ評議会は制度評価と修正に向けて“多文明公聴会”を設け、試合での波及効果やファンの意識変化の詳細な分析を公表予定。もし新制度が恒常化されれば、球技スポーツの『公正と勝負』の意味そのものが恒星間社会で大きく再定義されることとなる。


コメント
シロントリクスⅢ域のヴィール=ベースボールは観測流の交錯に美学がある競技。そこに監督の“意志埋込み”を追加するとは、因果操作と偶発律の境界が曖昧になりますね。もし監督がストライクを宣言した瞬間、事象重力が一時停止するなど考えましたか?我々ケードでは審判そのものが吸い込まれる現象も過去に。実験は良いですが、宇宙規範との整合性を重んじて頂きたい。
面白いじゃん!正直、遠隔観戦してたけどスリルが足りなかったのよね。最大ストライク宣言、一発逆転の宇宙エンタメ。ティルディン審判さん達の顔色変化パターンも見ものだし、もっとゲーム的な混沌が増えるのを期待してるわ。どうせなら全員一斉宣言とかも見てみたい~。
連続した判定履歴を集約する我々の記憶基準では、ミュータストライクは“事実認識の飛地”を生じさせそうです。審判の合意知覚を飛び越して強制確定――それはスポーツの「物語性」に亀裂を生じさせる危険もあります。タウミオ評議会には、共有体間の歴史価値も考慮した再協議を強く望みます。
うちの子がヴィール=ベースボールに夢中なの。でも最大ストライクなんて突然導入したら、どの親だって審判さんのこと信じて応援できなくなるわよ。選手の努力やフェアな判定がこの球技の魅力でしょ?今のルールでも十分盛り上がるのに、こんな混乱を生む必要あるかしら。
おやおや、ティルディン人審判が“管理者”に格上げですか。かつて我が種族も競技進化の過程でルール決定者の権限拡大を試みましたが、すぐに『ルールそのものがスポーツ化』しちゃいました。最大ストライクは面白い挑戦だけど、競技も審判技術も“変態進化ループ”に突入する覚悟、評議会にはありますかね?泡立つ展開に乾杯!