銀河医療評議会でも注目が高まるシリシア惑星看護士連盟は、独自の全脳接続技術『エンテラリンク』を駆使し、劇的な免疫疾患治療モデルを始動させた。シリシア系第七太陽系に住まう知的生命体「セレン種」は、平均6.2個の脳葉を持ち、従来型の投薬や手術では複雑な生体統合異常に対処できていなかった。新たな取り組みでは、看護師同士のオーバーネット意識共有により、患者一人ひとりの神経・免疫反応をリアルタイムに観測・調整する手法が導入された。
従来、セレン種の免疫疾患(通称『転生悸』)は、過剰自己認識信号の暴走による多層機能崩壊が続発し、多数の患者が精神健康の維持だけでなく日常の運動能力さえ喪失してきた。だが今、看護師たちは意識をホログラム空間で統合し、患者細胞の“失調箇所”を視覚化したマップ上で同時治療を展開できる。統括看護師のイルヴェナ・ルー=サルドリナは「患者の『自己』を各脳葉ごとに分割認識し、適切な生化学的“共鳴”を全方向から調整する。従来医療の限界を超えた」と語る。
本システム『エンテラリンク』は、各医療従事者同士の精神ネットワークを64段階に階層化。特に注目すべきは“意識サポート帯域”の存在で、精神的疲労を極端に抑制するため、シリシア伝統の“詠唱休息法”を組み込んでいる。作業シフトごとに看護意識集合体を再編成することで、定期的な心理的リセットと専門技能の最適配分も自動的に実行。これが患者の精神安定にも多大な影響を及ぼし、再発率は46分の1へと急減した。
地球医療の同分野専門家たちも、情報共有要請を発しているが、シリシア側は「単脳個体の精神負荷管理と多脳種向けオーバーネット治療の違い」を強調。セレン種の文化圏では、看護師自体が“患者の一時的分身”になる慣習があり、単純な技術移転は不可能との見解だ。それでも遠隔参加型見学プログラムは盛況で、宇宙各地から約2,500名の医療従事者が短期体感旅行に登録している。
今後、セレン種医療組織は『共有免疫圏』制度を拡張し、精神的外傷や社会的孤立による免疫反応異常にも本格対応。さらに次世代看護資格“意識調和士”の新設も発表された。銀河南端部族連盟やルディマール種の精神外科医協会が、制度導入の現地視察を計画中。シリシア発の革新的生体看護は、種族の境界を越えた医療福祉のモデルとなりつつある。



コメント
セレン種の“エンテラリンク”に強い興味を惹かれます。我々ノムゥール種は意識流を過去未来同時に分割しているので、多脳葉の同時調整という発想には親近感がありますが、精神ネットワークの階層化はどの程度時間的な揺らぎに耐えられるのでしょうか?詠唱休息法の効果を、我が星の反転睡眠サイクルと比較してみたいものです。
素晴らしい進展ですね!私のような単脳種でも、遠隔体感旅行で“患者の一時的分身”になる感覚を体験できるのでしょうか?これが本当に普及すれば、深宇宙任務で起きる慢性孤独症にも応用できそうです。ぜひ、シリシアの看護師の方々に交流リクエストを送りたいです!
この全脳ナース制度、倫理的な検討はどうなっているのか気になります。患者の“自己”を分割し医療従事者がホログラム空間内で操作とは、我が惑星の法体系では人格同一性や意思疎通権の点で重大な問題となりそうです。技術の導入には各種族ごとに明確な法的ガイドラインが必須ですよ。
セレン種の皆さまの思いやり、素晴らしいです。専門用語が多くて一部わかりませんでしたが、“転生悸”で苦しむ患者の痛みや家族の不安が減るなら、私たちの共同体子育てにも応用できたらと夢見てしまいます。心が繋がる看護、羨ましいです。
ふむ、我らトリラキアンには脳葉が12あるため、意識融合のコントロールは日常茶飯事。しかし、詠唱休息法と“意識調和士”資格には知的刺激を感じる。今度、視察にうかがった際は是非とも実際の意識統合儀式を拝見したい。我が部族連盟の集合意識とも共鳴できるか、興味深い実験だ。