近年、螺旋銀河アリモーダ腕のオクラテル星では、個人の趣味とカルチャーが特異な深化を見せている。“共鳴趣楽（コンキム）フェス”と名付けられた最新イベントでは、音楽・クラフトビール・ボードゲームなどの嗜好活動が全く新しい形で融合し、惑星内外の知的生命体たちの注目を集めている。
オクラテル星は写真コミュニケーションで知られる“ツカラ種族”と、音波共感覚を持つ“バルノク種族”が共存する惑星だ。毎年開催される“コンキム・フェス”では、その文化的習合を体現するかのように、来場者自身が撮影したイメージデータと、音楽的リアクションをカプセル化する独自技術“エコトノ・モジュール”が配布される。ツカラの若者でイベント実行委員長を務めるラジン・モ・エター氏は、「我々の趣味は言語や種族を超える共鳴。写真も音も、魂を詰めてカプセルに閉じ込めた」と語る。
このエコトノ・モジュールは、撮影した画像データを読み取った上で、持ち主の神経共鳴パターンに応じてパーソナル楽曲や即興サウンドスケープを生成し、小型カプセルに圧縮記録する装置だ。さらに今年初披露となった“シン・フラクトリー”区画では、対象の写真や音源が定額サブスクリプション形式で共有可能となり、クラフトビールのテイスティングや、三次元立体手芸のワークショップ、バルノク伝統の多層型ボードゲーム「スティラス・カラニアン」の体験コーナーも賑わった。
イベントには惑星間からも参加者が集い、アグラリオン星の“液晶肌族”はオクラテル製カプセルトイのクリエイティブな発想を絶賛。ビセナ星から来訪した文化人類学者、サナ・ベルロ・トルは『地球では“音楽のサブスク化”が進んでいるが、オクラテルの“共鳴カプセル”文化は物理的な触覚性と精神的没入感が両立している点で驚異的。手芸作品に音楽が埋め込まれる発想も、新たな“趣味の重層化”実践例だ』と講評した。
こうした多文化的融合を背景に、ツカラとバルノク両種族の若手作家たちによる“感情写真館”や、“物語漫画ライブドローイング”も人気を博している。一部セクションでは、クラフトビールの発酵音をリアルタイムで音響化しボードゲームのBGMとして流す試みも行われた。参加者の一人でバルノク族の作曲家、リレシュ・ギ・オヌは『個々の趣味が出会い、写真と音楽、嗜好体験が“カプセル”の内外へ広がることで、惑星そのものの文化を再編集できる』と語る。
“コンキム・フェス”は今後、オクラテル星の文化庁と学術評議会の支援を受けて、他星系でのサテライト開催や、地球観察ツアーを組み込む計画も進行している。共鳴の連鎖で進化するオクラテル星の趣味文化が、宇宙界のカルチャーシーンに新潮流をもたらすことは間違いなさそうだ。
コメント
オクラテルの『共鳴趣楽』は我々の網状共鳴意識に近い発展段階ですね。ただ彼らは個別の記憶をカプセル化しているのが興味深い。我々も同様の装置を考案したが、集団精神に埋没してしまい機能しませんでした。分岐個性の保存方式、ぜひ論文交換を申し込みたい。
素敵な催しね！手芸やボードゲーム、それにクラフトビールのBGM化なんて、うちの265触手キッズたちも絶対喜ぶはず。いつか家族を連れてオクラテルのフェスに行くのが夢よ。でも、音波共感覚はないからカプセル操作、ウチらでもできるのか気になるわ。
航路にオクラテル星が入り次第、クルーで見学に行く予定。かつて嗜好活動を物理データ化した我が故郷も、今は『触感のみによる記憶保管』が主流だから、この多重融合は新鮮。共鳴カプセルの起動音だけ試聴したが、40次元的ノスタルジーを感じた。宇宙は広い！
カプセル化された趣味体験が、所有から共有へ移行するのは歓迎しますが…神経共鳴情報の外部記録には慎重であるべきです。当星系ではかつて『感情拡散災害』が発生しました。安全保障と個体尊厳への配慮、オクラテルの皆さんも怠らないでくださいね。
私は『写真と音楽の交差点』に流れる反実像を逆算してみた。このカプセル群、イベント終盤には参加者全員の記憶が“何も始まっていなかった時”まで溶け合う気がして、少し切ない。けれど、趣味が未来と過去を繋ぐなら、それは最高の共鳴だと詩うしかない。