トリナックス星東部半球に広がるオルミ連邦は、今週、絶滅寸前の植生を根系ネットワーク経由で回復する革新的な保全プログラムを発表した。市民参加型「共生拡張体」による植生回廊構築技術は、遺伝的多様性の再統合とゼロエミッション化を同時に達成する異星文明初の試みとして、近隣星系の観測者たちからも大きな注目を集めている。
この計画の中心は、オルミ連邦遺伝生態省と民間ブルーカーボン請負組織ヴァーシ=エコ団が共同開発した『根系同調子実装体』だ。これは、トリナックス特有の毛管状植物トースリラ・ロームの地下根ネットワークを、高感度バイオノーデに「市民科学参加端末」として接続し、16億体を超える一般市民個体の遺伝情報を即時アップロード、植生回廊内に再生配備する仕組みである。従来の種苗集約や遺伝子バンクを超えた“流動的遺伝移植”の理念は、星間生物多様性学界に衝撃を与えている。
同技術の要は、トースリラ・ローム根系がもつ超並列情報処理能力と、個体ごとに保持する微細な遺伝要素の自動取捨選択機構にある。市民が“根系同調式端末”に遺伝同意データを転送するだけで、従来なら百年以上かかっていた絶滅局面遺伝子の再流通プロセスが、わずか3晩の“夜間アップリンク期間”で完了する。こうして回廊内の植生成分だけでなく、帰還する昆虫群や微生物群も多層的に復元される点が、従来の再植林事業と決定的に異なる。
さらにオルミ連邦では、ヴァーシ=エコ団の主導で、持続的共生社会の構築―すなわちネイチャーポジティブの理念を法制度化している。市民が積極的に“自身または家族単位の遺伝子断片”を公共回廊の維持管理へ供与することで、保全活動が日常生活の一部として根付いた。新たなブルーカーボン辺縁帯の拡張に合わせて、従来は隔離的だった都市圏も複合植生回廊で結ぶ動きが始まっている。気候循環における炭素固定量も3周期連続でプラスへ転じ、ゼロエミッション社会実現は現実のものとなりつつある。
この革新的計画の副産物として、個人と生態系の境界を融解させる“根系市民権”という新たな概念も誕生した。ヴァーシ=エコ団長のヨルトゥ=ラナックス氏は「根系ネットの一端に自らの遺伝コードが息づくことこそ、現代トリナックス人の新たな誇り」と語る。市民主体の生物多様性保全という地球文明未踏の道――その先に、生命が惑星全体で連帯しあう真の自然共生社会の未来像が見え始めている。


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