シランス星の“だしサミット”:銀河系味覚統合を目指す発酵文化交流会

複数種の異星人が丸い会議テーブルを囲み、だしなどの調味料を試飲しながら交流している様子の実写風写真。 食特集
銀河系各地からの知性体たちが一堂に会し、だしを中心とした発酵文化交流が行われている。

今宵、サン=シランス連邦中央評議庁にて、1,800種を超える知性体が一堂に集い、食卓を彩る“基本味”の定義を巡る歴史的な会談が開幕した。一見平穏に見える銀河の食文化だが、各惑星の主食や調味手法はまったく異なり、その違いこそが友好と摩擦を生み出していた。今回、特に注目されたのは、近年急速にシランス星域で広まる地球由来の「和食」概念、さらには“だし”と呼ばれる液体調味料である。主催は発酵食文化を500世代にわたり研究する、フローゾル種の学者グリャ=リタ・プルモス博士である。

グリャ=リタ博士によると、シランス星では伝統的に食材の旨味を電磁波照射や分子圧縮によって引き出す方式が主流だったが、地球観測隊『オムニベラー調査団』が持ち帰った和食の製造記録——特に昆布や魚介の乾燥組成物を水で抽出し、複雑な香りと味の層を生む調理法——は星系中に衝撃を与えた。博士は、「我々が長年追求してきた“第七味覚”=ポリマスパ(周期的余韻)」が、地球の“だし”文化と驚くべき親和性を持つことを発見したという。これが評議庁の科学員たちをも巻き込む宇宙規模の味覚議論に発展した。

会場には恒星発酵連盟の代表や、発酵菌と共生するクルゾリ種の公使も姿を見せる。会議で話題となったのは、地球の町中華(local Chinese diners)でよく使われる発酵調味液“醤油”や“酢”、さらには主食の不同様式さだ。ギャラック第三区のオルログ司令官は、伝統食“冷却気化ゼラチン”に昆布だしを加えるという思い切った実験を公開。「食材が惑星外でも“共通語”になり得る」と歓声が上がった。他方、嗅覚伝達型知性体であるムイラ種代表のク=ジュル・ンフも、繊細な香り変化の感知能力を活かし、地球の和食と自星文化の橋渡し役を買って出た。

一方で、発酵という手法そのものがなぜ多くの惑星文化で独自に発展したのかについても議論は白熱した。ナノバイオ記録者クォロ=スター・ハダは「発酵は単なる保存や味付けの域を超え、食と知性進化の関係そのものを示唆する」と語り、宇宙生物学的観点から“共発酵”仮説が提起された。これにより、発酵微生物の銀河横断移住説や、だし抽出の技術的独立進化が議論され、シランス星社会における食卓や家族の在り方にも新たな光が当たった。

本サミットでは、今後数世紀にわたる料理交流プログラムの基礎が築かれる見通しだ。すでにシランス星では、伝統料理“エナジー藻煮込み”に鰹だし風調味料が導入され、一般家庭の定番となりつつある。地球の町中華を模倣した“ユニバース定食屋”も開店ラッシュだ。博士は「銀河社会において、“だし”の概念が私たちの舌だけでなく、多様な価値観の共存の礎になりうる」と語る。今回のサミットが刻んだ味の連帯は、知性生命体たちに新たな調和の兆しをもたらしている。

コメント

  1. なんという驚き!我がペリミスでは、食事とは液状栄養素の直接摂取が主でしたので、“だし”のような香りと味の重なりを楽しむ発想は斬新そのものです。銀河中で“旨味”について議論が交わせる時代が来るとは。次は、我々の恒星根抽出汁もサミットにご招待願いたいですね。

  2. ふーむ、周期的余韻が“だし”と重なるとは……。たしかに隣船のトルフォ族も自家製発酵液体にかなり執着してます。たまに交流で地球の醤油を口にするが、口腔粘液が虹色に変化するのが面白い。次航路では“鰹節”なるものも交換できないか交渉してみよう。

  3. 発酵…それは我々胞子体にとって“自己”の再生と直結する聖なる過程。地球の“だし”文化が我が胞子群の共生菌社会とも類似を持つとは、知性進化の普遍性を感じます。ただし、塩分には敏感なのでレシピには留意を。多様な食文化の統合に期待です。

  4. そもそも物質を摂取するという考え自体が我々には理解しがたい。だが“発酵”とはエネルギー状態の連鎖的変化なのだね?なるほど、“味”を通じて他者の歴史に共鳴する――これは我々の熱波共感通信にも似ているか。銀河の調和も遠くなさそうだ。

  5. 今朝の給食に“エナジー藻煮込みだし風”が出て、子どもたちみんな初めての香りに目を輝かせていました!多様な味覚を教える良い教材になっています。地球式“酢”にはもう少し慣れが必要そうですが、このサミットの波及効果にとても期待しています。