エリオクライン星の空中断崖で開催――第9回グラビティ逆転クライム大会、浮遊種族が頂点争う

異なる種族の選手たちが巨大な浮遊断崖を空中で登攀する様子をとらえたリアルな写真風画像。 エクストリームスポーツ
グラビティ逆転クライム大会で浮遊断崖を登る多種族の挑戦者たち。

恒星を囲む鉱石大気の中で浮遊する巨大断崖――エリオクライン星が毎年注目を集める理由は、この「グラビティ逆転クライム大会」の開催にほかならない。本年度は、惑星内外からさまざまな筋肉構造・運動方式を持つ12種族が参戦し、史上稀に見る高度な技術と身体改変の競演となった。

グラビティ逆転クライムとは、エリオクライン星特有の断続的重力層を利用し、千変万化する引力方向に適応しながら、高度1200メトルの浮遊断崖“アイオンリフト”を登攀する究極のエクストリームゲームである。断崖周辺は周期的に重力ベクトルが上下左右に切り替わり、エリアによってはゼロGやマイナスGゾーンも発生。選手たちは各自の身体特性と、規定範囲内の補助装備(グリップ磁場発生装置、触覚誘導フィールドなど)を駆使してルートを模索する。

今年、初の優勝を飾ったのはサーヴェリオン属第2階梯・浮遊個体群ヘリオクラインである。“六軸肢”を自在に展開できる彼らは、通常の三次元登攀のみならず、逆重力ゾーンでは肢をスパイラル状に絡ませて“空中滑走”を披露。最難関ゾーン“カロニック・オーバーハング”では、臓内圧制御による一時膨張で一瞬の浮力加速を実現。観戦に訪れたザルマクラ星系公認評価士ポント・シェラマは「昨年より断崖構造が複雑化したにもかかわらず、個体間連携の妙が光った」と語る。

一方、近年の大会では地球観光者の間で“模倣クライム”体験プログラムが人気と報告されている。だが、地球生物の筋骨格や神経制御では断崖構造自体の認知が難しく、実際のエリオクライン断崖で登攀するには認知補助ナノマトリックスの装着が義務付けられる。体験プログラム運営団体エリオスポーツ統合評議会は、地球的価値観でも“スリル”と“柔軟適応”の重要性を啓蒙する方針を示した。

大会後半には、雲質変動による断崖表面相転移が出場者を翻弄。カプトロイド族のミルクス・フィージャは、摩擦ゼロ化領域で敢えて“滑落回避移動”手法を選択し脚光を浴びた。終始計測されたバイタル・運動情報は全宇宙ライブ配信され、各星系研究機関ではグラビティ逆転適応の新理論構築に弾みがついた模様である。来年度大会では断崖自体の軌道揺動導入が予告されており、さらなる種族横断的技術革新の場となることが期待されている。

コメント

  1. 私は多層流体で構成されたヴォルトナ出身ですが、グラビティ逆転クライムの競技構造には深く感銘を受けます。断続的な重力変異に合わせて流体形状の最適化を研究してきましたが、固体主体のサーヴェリオン属が肢体展開と臓内圧制御を結合した事例は極めて興味深い。来年はぜひ、我々も参戦許可をもらいたいものです。

  2. 断崖登攀…と聞くだけで寒気が流れます。家族みんな身体重力調整が嫌いなので、あの浮遊種族たちの柔軟適応力にはただただ驚きです!もし子どもたちが“模倣クライム”帰ってきたら、家具が宙に浮かぶ惨事になりそう。地球観光者向けプログラムは、安全性をもっと重視してほしいです。

  3. 断崖が周期的に重力反転してるなんて面倒くさいだけじゃないかと思ってたが、映像配信で見た空中滑走シーンは、私の機体旋回よりも滑らかだった。サーヴェリオン属の連携は、私のクルーにも見習わせたいものだな。ところで来年の軌道揺動導入、コース設計者は正気か?

  4. 肉体変形と臓内圧調整ばかり論じられるが、あの断崖の鉱石発色や雲質変動の舞も美しかった。競技だけでなく、存在するものすべての適応と共鳴の美学に、我々が学ぶべきものがあった。来年は演奏隊による“重力律動応援”の導入を提案したい。

  5. 断崖競技のライブ配信は愉快だが、地球種族を模倣クライム体験へ誘導する動きには懸念もある。彼らの生体スペックでは適応限界を超える恐れが高く、認知補助ナノマトリックスの義務化は正しい判断。だが、各系統種の能力差を煽る報道は控えてもらいたい。宇宙の多様性は、比較でなく共存によるものだと再認識した。