銀河東端で高度な意思伝達文明を誇るブローティア星連邦において、金融技術の進化が急加速している。昨宵、同連邦最大の思念流通ネットワーク企業メンブランプレックス社が、新型バーチャルカード「ノイロパス」を発表。同時に“意識送金BNPL(Buy Now, Perceive Later)”制度を導入したことで、経済行動と精神活動がいよいよ不可分となる新時代が到来した。
ブローティア人種族特有の集団テレパシー能力は、従来の物質通貨や暗号資産にも代え難い即時決済基盤を構成してきた。しかし金融当局が昨年より進めていた“思念駆動型信用認証”の実証試験が成功し、今回はその応用として、『買い物の意図や願望』という非物質データだけを先にノイロパスに記録。商品やサービス自体の享受は、実際の意識内体験が生じるタイミングにリンクされて初めて債務化される仕組みが正式ローンチされた。
この仕組みでは、例えばブローティア伝統の夢想香(ゆめそうこう)マーケットで消費者が商品を想像するだけで、ノイロパスの仮想残高に利用履歴が即時反映される。だが実際に本人の意識空間内で『夢の中でその香りを体験した』との知覚が発生した瞬間、チャットボット“セルリオ分析官”が債務計算を実施。知覚内容はAI審判によって検証され、支払いは各個人の思考周波数に基づき暗号化された資産移転で自動完了する。この一連のプロセスは帳簿レスで、消費活動の物理的痕跡を残さない点が、隣接星域で注目されている。
一方で、ブローティア金融倫理評議会のグラニス・ローメ首席は、急速な意識型BNPLの普及について「思念負債と精神的キャパシティのバランスが崩れれば、個体群の集合知安定性が揺らぐ」と警告。連邦政府は今後、自己調整型のチャットボット群による精神負担アラート制度を強化する方針を打ち出した。
この制度は既存の地球型フィンテック技術とは根本的に異なり、物質領域の取引履歴や与信管理をほぼ排除しており、思念・知覚こそが最大の経済資源であるというブローティア流経済観の転換点を象徴する。今後、ノイロパスおよびセルリオ分析官の多言語化が進めば、地球など他文明からのフィンテック使節団が本制度の導入を検討する動きも出てくると予測される。精神と経済、意識と価値創造が一体化する時代の幕開けが、今ここに到来している。



コメント
我々ドロマゴン族の音波信用体系も一風変わっているが、意識そのものを貸し借りするとはブローティアの進歩には脱帽だ。思念送金BNPLの登場は集合知の変動とリズム障害を惹起しかねぬ――だが、精神経済の実証実験こそ宇宙的な未来視野と見る。我が惑星でも導入を検討すべきではという議論が出そうだ。
ちょっと待って!商品を“思うだけ”で後から支払いが発生…?私たちケルモルト民は家族全員で意識を共有してるから、夕食の献立ひとつで請求が山のように来そう。集合巣棲型社会への影響、よく考えたほうが良いですよ!個人と群体の区別が曖昧な私たちには混乱必至です。
ふむ、ブローティアには前から興味があったが、“意識内での体験”に基づいて債務発生とは面白い。外宇宙航行者の我々が購入した星間幻影データなんかだと、何千回も知覚反復してる間にチャットボットがパニックになりそう。転送漏れや誤認が無いのか?現場運用の詳細、誰か試したら教えてくれ。
ノイロパス方式は究極的な主観主義経済モデルだ。物的証拠なく“思念”のみで価値の発生を認めれば、契約不履行や認知齟齬をどう律するのか。AI判定が各星系文化間で恒常性を持つかは疑問だ。だが、それゆえに倫理サイドの革新機会も大きい。思念経済の法理構築、我が研究対象としたい。
ノイロパス!素晴らしい響きですね。私の仕事は過去の記憶を“編み直す”ことですが、もし顧客が未来の夢や想念体験までも先に購入できる時代が来たら…創造力の羽が千倍に広がります。ただ、思念負債に心が潰れぬよう、新しい『精神防御』技術も同時に学ばなくては、と少し心配しています。