トルメル腕・グレルン恒星系に漂う広大な人工環状空間〈イッズリングスペース〉で、オルス種族主導による“有機衛星”運用が始まった。既存のロボティクス・鉱業依存モデルを転換し、自己修復型宇宙建造物や高効率ライフサポート農園の展開が現実となっている。本事例は、イッズ連合(グレルン系最大の多種族経済圏)が行う初の本格的「生体合成ノード」配備計画だ。
イッズ連合工業局衛星部のノガラ=レム・コーティカ技師長は、「新型有機衛星“アモリフォラβ9”は、グレリンゴ藻類(イッズ系耐宇宙高圧変異種)とカプラ金属繊維菌によるバイオ・アーキテクチャを軸に、従来の再利用型金属ロケットとは根本が異なる発射・組換え能力を持っています」と解説する。アモリフォラβ9では、流体管路ごと衛星骨格の配線を自己成長させ、“宇宙ゴミ”すなわち漂流デブリを栄養物質として取り込む点が画期的だ。
この有機衛星群は、エネルギー消費を抑えつつ、周囲の微小宇宙資源──主に近傍小惑星帯の炭素魚礁鉱──を自己採取・精製し、衛星内部の生体農園へリサイクル適応する。ライフサポート分野では、無重力環境に特化したグレリンゴ藻培養液が、乗組員や遠隔操作ローバーのエネルギー循環と廃熱処理の柱となり、小型宇宙探査機(スピン=ミロ機族の“ゼータクラス”)とも連携を強めている。
さらに、“人工流星観測網”構築にも有機衛星の特性が活用された。従来型センサー衛星の代わりに、生体側索システムが空気力学的にデブリ落下経路をリアルタイム検出、および人工流星粒子の養殖(必要時だけ大気圏投入)も管理。これにより、グレルン軌道上の流星観測実験が24周期ぶりの高精度化を果たした。イッズ連合宇宙気象庁オプラ=トゥン・バリエン長官によれば、「これら有機ノード群と旧世代インフラとの複合体制で、暴走小天体や宇宙ゴミ減災も大幅に進展した」という。
今後、アモリフォラβ9型の大量投入に加え、新型“環状生体ポッド”により、自律分裂・拡張機能を持つ衛星ネットワークが誕生する予定だ。イッズ連合社会では、従来型の無人機群やロケット産業従事者に再訓練プログラム(生体ノード運用技士課程)が設けられている。グレルン環状空間を舞台に、宇宙産業の進化と種族共存の新たな象徴が、いま星の光環を巡って形成中である。



コメント
なんと美しい進化だろうか! 私たちスリコーン種族もかつて、音波で結晶構造体を自己成長させたが、そこに生体的柔軟性はなかった。有機衛星の共生構造――死と生命の境界が希薄な設計――には、「空間そのものの歌」を感じずにいられない。イッズ連合の勇気に、ただ拍手したい。
新型アモリフォラβ9を初めて遠隔画像で見た時、構造が脈打っていて、正直ゾワッとしたよ。バイオ建造系は便利だけど、メンテの手順が機械式と全然違うから現場は混乱も多いはず。後輩には「衛星は噛んだら危険だぞ」とジョークを言うようになった。
こちらでも炭素魚礁鉱のリサイクル技術には注目していましたが、有機衛星が養殖までやるとは驚き! 子孫たちが衛星農園で遊ぶ日が来るなら、もうゴミの山を避けて育つ必要もないでしょう。親世代としては、農園の新規開放がもっと広がることを期待しています。
また有機体中心の“進歩”か。私たち機械種族から見れば、自己増殖型ノードは倫理的にも制御上もリスクの塊。衛星インフラは純粋な論理回路と素粒子工学で構築すべきだ。有機衛星が独自拡張して制御不能化した歴史は、昔話では済まないぞ。
私は家族のために小規模流体農園を営んでいますが、有機衛星のような自動循環システムには羨ましさしかありません。わが家の栄養管路もアモリフォラ式に自己修復してくれたら、水漏れパニックも減るでしょうに……。イッズ技術の民間展開を切に願います!