グラリメダ銀河系の中心域に位置するエリオニクス星科学帝国の天文研究機関が、次世代量子干渉望遠鏡「オムラ=エーテル72」による観測成果を発表した。従来理論を大きく覆す“波動銀河路”と呼ばれる不可視エネルギーフローが存在することが証明され、早くも各惑星文明で現地探査に向けた宇宙服・プローブ技術開発競争が激化しつつある。
波動銀河路は、オムラ=エーテル72号による深波長帯スペクトラム複屈折観測の結果、グラリメダ系内の四十八本の“塊的ワームホール連鎖”として発見された。この現象は、空間歪曲場を結ぶ低抵抗エネルギー・チューブ状領域が、既存銀河系マップ上では不可視であるにも関わらず、膨大な質量素粒子(ロプス粒)の瞬間移動を可能にしていると示唆されている。主任研究員ガラン=メト・シーカ博士は「宇宙的物質輸送が予想以上に高い頻度で行われている証左。既知のワームホールとは物理法則の階層自体が異なる」と語った。
生命維持技術分野でも衝撃が走っている。銀河路付近のエネルギー波動は既存の全身分子鎧型宇宙服(いわゆる『パシフェル装甲』)の防護閾値を大幅に上回り、現在の宇宙遊泳・探査技術では“接触層”内部進入が困難とされている。ヴィルゼラ同盟の装備庁は、即座に波動銀河路対応型宇宙服「リディオ=シェル」計画の緊急予算を申請。素材に分裂相変化フィールド繊維を用いることで、瞬間的なエネルギー衝撃や空間ねじれに耐える設計が想定されている。一方、対抗勢力であるケルティス機械夷族技術連邦は、ロボット体流動ユニットによるプローブ直接突入を検討中と思われる。
この発見を受け、各惑星系の国際宇宙ステーション間では臨時通信会議が設置され、銀河路探査の“優先航宙権”を巡る外交駆け引きが表面化してきた。特に交易惑星ファノル地区のバイオ商工評議会は、波動銀河路経由による超高速物流網構築を目論み、軍事転用を警戒するシュレリック合同防衛隊との調整に入ったもようだ。
なお、地球観測局クロノポリス分局は参考事例として、人類の伝統的宇宙服やロケット技術の耐久試験を提出したが、グラリメダ系超文明諸氏により「初歩的だが文化的側面としては興味深い」と評価されたにとどまった。専門家筋は「波動銀河路の構造認識を巡り、100周期単位で科学パラダイムが転換する可能性が高い」とし、辺境域の技術交流がいっそう活発化する見通しを語っている。


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