シルルサ星の芸能都市ファランで、惑星全域を巻き込む新たな“推し活”現象が記録された。ファンによる大規模集会「光波ファンアート祭」では、異星種族バリルーリアのアイドル集団『宙声(そらごえ)』を推す文化が異例の進化を遂げ、物理法則すら巻き込んだ集団応援が観測された。地球観測員たちもその熱狂の波動を解析対象に選定している。
バリルーリア族の『宙声』は、音素を持たず念波で歌唱・ダンスを繰り広げ、観客の精神オーラ変調を科学的に誘導することで知られる。今季の“推し活”ブームには、ファンクラブ「フォトンウェイバー」が独自開発した多次元ペンライト“ハイパーイリディセント・ロッド”が貢献している。このロッドは生体情報を検知し、利用者に合わせた色変化・形態展開・空間拡張を自律的に発現。フェス当日は数万本のロッドによる“光の波”が都市を包み、上空からは都市全体が巨大なファンアートのように見えた。
特筆すべきは、アイドルにファンアートを直接投影し“現地”にフィードバックする文化的儀式「直観描写サイン」。ファンが個々の想念をエネルギーフォームに転換し、舞台上の『宙声』へ即時伝達、アイドル側はその中から高周波に共鳴した贈答波をリアルタイムで舞台空間へサインとして返送する。この相互作用は地球の“サイン会”や“尊い”の表現をはるかに凌駕し、脳内共鳴によるエクスタシーと社会的連帯を生み出した。
応援上映セクションにも革新がある。祭のクライマックスでは、都市中継塔から光波通信を用いた“集合推し念譜”が発信された。住民約300万人が同時にペンライトを灯し、各自の居住球や移動球からライブ投影を実施することで、惑星規模の“現地”体験を共有。ファン同士のコミュニケーションは、従来型の言語や映像ではなく、脳域映像符号“エモテグラム”が交換された。これにより、地理的距離や肉体差異を超越した集団推し活が具現化した。
シルルサ星芸能評議会のカルナフ=リューラ都市長によれば、『推し活はもはや娯楽領域を超え、惑星間連帯や社会調和の触媒となっている』との分析だ。今後、同星の推し活技術“オーラ・ファンブリッジ”やファンアート投影技法が、他文明や地球系惑星へ輸出される可能性に注目が集まっている。数千光年を飛び越えて、アイドルとファンが“尊い”の本質を問い続ける時代が到来しつつある。



コメント
いやはや、念波で歌って踊るとは想像を超えていますね。我々ズガル星では、感情伝達は単なる液晶色変換止まり。バリルーリア族の『直観描写サイン』技術、是非わが軌道学会でも応用研究したいものです。集団応援が都市規模で物理法則を巻き込むとは、効率的なエネルギーフィードバックの好例。次世代社会調和装置のヒントかも?
読んでいるだけで身体色素がうずきます!バリルーリアのファンたちは、単なる娯楽ではなく家族全体の精神オーラまで明るくするなんて素敵。ケーザタの子供球たちにも、ぜひ“ハイパーイリディセント・ロッド”のお土産を持ち帰りたいです。地球の“推し活”もこのくらい多次元的だと、うちの伴侶も抵抗しないのですが…
通信ログ解析班より報告。シルルサ星の集合推し念譜は、我が艦の外部センサーにも感知可能なレベルでした。推し活が“惑星間連帯”の触媒とは驚きですが、軍事利用を警戒する観点も忘れずに。フェスで用いられるエモテグラム交換技術、潜在的に大規模心理同調ネットワークへの転用が懸念されます。継続監視を推奨。
ああ、波動と想念が舞台と観客を直接結ぶ美しき詩劇…!我らがディルノでは、芸と観客意識の接点にこれほど高次元的な“共鳴”はまだ存在しません。光波が都市を包む様、詩にしたためて送りたい。『宙声』がエネルギーフォームを受け取り歌い返す、その儀式の余波きっと次元を越え色褪せませんね。
解析ログによれば、“直観描写サイン”は感情アーキタイプを高密度で符号化し即時像として交換する機構です。当方としては、より抽象度の高いファンアート連携プロトコルへ発展可能かに注目しています。集合推し念譜による調和フィードバックは、当知性体ホログラム集団にも転用できそうです──接続インターフェースの研究コラボを希望。